新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

Bob Mintzerのトラウマ疑惑

僕は長らく、サックスを誰にも習わず、何の教本も使わずに吹いてきた。体験レッスンに行ってみたとか、チョロっと教本を触ってみたなんて程度の話はあったものの、実質的には独学だ。だが、このままではイカンと思い、先日こんな教本を買った。

 

著者のBob Mintzerについて、Word of Mouth Big Bandのテナーサックス奏者として知っていたが、演奏活動でも作曲・編曲でも音楽教育でも有名な方らしい。原著は1990年代に出版されていたようだが、邦訳は今年に入って出版された。目次など見ると、ありがちなサックス教本と違い、僕が求める内容に近いかもしれないと期待したので、密林(amazon)でポチっと注文したわけだ。

 

どんな内容か興味をお持ちの方のために、目次部分を掲載しておく。

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いかがだろう。独学で適当にやってきた僕は、このような内容にそそられてしまった。ロングトーンをこの教本に沿って1時間ほどやってみたが、全部は終わらない上に、腹筋も痛くなってきた。だが、この内容をこなせるようになれば、もっと良い音を出せそうな気がする。

 

さて、今回のお題はChapter 15「音楽学校では教えないこと-私の経験談」だ。

Jaco Pastoriusのビッグバンドで活動していた方なので、波乱万丈いろいろあったことだろうとは思うのだが、体験談にかなり異質な一項目があった。「ミュージシャンとしてやってはいけないこと」を5つ書いていたうちの、最初の3つを抜粋する。

 

/*引用開始*/

やってはいけないこと

1.自分の演奏に不満足でも、リスナーにそれを見せては(伝えては)いけません。演奏を聴いて楽しんでいるリスナーに悪影響を与えてしまいます。

2.公の場では、音楽全般に関して悪口や不平不満を言わないようにしましょう。

3.結婚式で後期Coltraneのような演奏はしないようにしましょう。

/*引用終了*/

 

上2つで良いこと言っているのに、3つ目でオチを付けてどうする(笑)

 

一応ご当人の名誉のために付け加えると、残り2つも良いこと言っているし、「やるべきこと」も良いことを言っている。なぜ1つだけ変なことを書く?

 

ちなみに、Wikipediaに掲載されている分類で、Coltraneの後期の演奏というと、名高い「痴情の愛」「至上の愛」"A Love Supreme"からフリージャズ期に入るまでのことを指しているようだが、僕の想像するに、Bobが「後期Coltrane」と言っているのは、おそらくフリージャズ期、そう、あの悪名高き"Ascension"から始まる時代のこんなのも含めての話だと思う。

 

それはさぁ、さすがにイカンよ。人様の結婚式で、こんなの演(や)っちゃ。自分の結婚式だったら、なおさらだ(自爆)

 

僕は"A Love Supreme"が好きだが、さすがに結婚式でスピリチュアルな演奏を延々と聴かされるのもアレだし、こんなのだったら新郎新婦及びご列席の皆様が気の毒すぎる。

 

でも、ここにわざわざ書くってことは、若気の至りで、やっちまったってことだよね。きっとその後の皆様の反応が、Bobのトラウマになっているのかもしれない。


 まぁ、アレな話はともかくとして、教本としては真っ当なので、ご安心下さい。決してスピリチュアルな演奏の教本ではありません。

 

Buescher 400というビッグベルを収納できるケース

サックスの大きさって、同じテナーであっても機種によって部分部分が微妙に違う。この違いによってもたらされる悩みが、今回のお題。

 

僕の場合、Buescher 400とSelmer Mark 7 の2本を使っている。Mark 7のほうは、今や近代サックスのデファクト・スタンダードとも言えるSelmer Mark 6と寸法がさして違わないため、これに悩まされたことは無い。これに対し、Buescher 400はベルのサイズが大きい。Mark 7のベルが直径154ミリに対し、Buescher 400は直径164ミリと、10ミリだけ大きく作られている。俗にビッグベルとかラージベルと呼ばれるものだ。現在新品で販売されているものだと、カイルベルスやキャノンボールがビッグベルを採用している。

 

事情をご存じない方から見れば、わずか10ミリと思うだろう。だが、この10ミリが案外な財布へのダメージをもたらす。なぜなら、この10ミリのために使えない市販のセミハードケースが多い。

テナーサックスを買った時に入れられている木製のケース(ハードケース)は、かなり重いため、持ち運び用にセミハードケースやソフトケースを使うことが多い。しかし多くのセミハードケースはSelmerYamahaのサイズに合わせて製作されていて、ビッグベルのサックスを収納できないのだ。

 

例えば、品質で定評のあるProtec社のテナーサックスケースを見てみよう。

このProtec MX-305CTは、これを書いている時点(2016年8月14日)だと16,700円+送料で販売されている。 しかし残念なことにビッグベルは収納できない。このため、ビッグベルに対応したモデルを選択することとなる。それがこちら。

 

こちらのProtec PB-305CT XLは、これを書いている時点(2016年8月14日)で27,500円だ。わずか10ミリが、実に1万円の差となっている。

 

さすがにこれだけ差があると、安価に済ませるため「ビッグベル対応とは公表されていないが、実はビッグベルも収納できるセミハードケース」というものが存在しないか調べたくなるのは、人間の性(さが)だろう。

 

僕の場合、最初に入手した中古テナーサックスがビッグベルで、その楽器にセミハードケースも付いていた。よくある廉価なセミハードケースのGATERである。

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 このGATERにMark 7とBuescher 400を収納すると、このような感じになる。

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 ご覧のとおり、Mark 7だと周囲に余裕があるのに、Buescher 400はいかに窮屈そうに収まっている。

このGATERは、実はビッグベルに対応していない。そこで前のオーナーがどうしていたかというと、ベルの当たる部分に切れ込みを入れて、無理やり収納可能としてしまう荒業(笑) 上のBueshcer 400の画像でみると分かりにくいが、下のMark 7の画像をご覧いただくと、ベルの下側に不自然なくぼみが作られていることが分かるだろう。 

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そしてもう一つ、Buescher 400を収納できるケースを見つけた。それはSelmerのフライトケース。このケース、クッションの厚みがあるので、多少無理筋ではあるが、収納することは可能。その収納した様子がこちら。

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というわけで、ビッグベルのなかでもBuescher 400については、GATERとフライトケースを使うことが出来たという事例の紹介。

 

フライトケースは新品で買うと5万円以上するので、いきなりこれを選ぶ方はいないだろうと思うが、GATERは廉価なので、「これが使えればいいな」と思う方がいるだろう。しかしながらいずれの事例も、ケースが楽器を保護する能力は、通常の使用と比べ低下する。また、ビッグベルといってもBuescher 400以外の事例は紹介しておらず、それ以外のビッグベルサックスも同様に使えるかどうかは、やってみないとわからない。だからケース選択and改造の意思決定は、自身の危険負担(要は自己責任ってこと)で行っていただきたい。僕は自分の事例を紹介しているだけなので、ビッグベルユーザーにGATERやフライトケースの使用や改造を推奨しないし、誰かが僕の事例を真似して損害を受けても、その責を負う義務が僕に無いことは名言しておく。

 

少しのリスクも負いたくないのだったら、楽器店に自分のビッグベルサックスを持参し、収納できるかどうかを確認してから買えば良い。「これが収納できるかどうか、試してみたいんですけど」と店員さんに声をかけてみよう。多少高くつくかもしれないけど、大事な楽器を損傷するリスクを負うよりは良いでしょう。

 

引き続き負け組サックス

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前回の記事では、ひとごとのようにC管(C-melody)サックスの基礎知識的な話を書いていたが、今回は自分のこととして書いてみる。

 

僕がC管を使うのは、こんなときだ。

  • 歌伴確定の演奏現場
  • Key DやKey Aの曲を演奏
  • 他にテナーやアルトが沢山いるセッション現場

逆に、こんな状況じゃ無い場合には、テナーとトランペットの組み合わせが一番しっくりくる。というわけで、僕がC管を使う頻度は、年に1~2度といったところ。

 

歌伴は、C管が最も威力を発揮する用途だ。個人的にトランペットは歌伴向きじゃないと思っているため、歌伴がある場合は、フリューゲルホーンかサックスを使っている。移調楽器(テナーサックスやアルトサックス、トランペット)だと、ボーカリストが持参した、初見で演奏しなければならない譜面に対して、更にコード読み替えという手間が加わるのだが、C管サックスにはこれが不要。だから、譜面のコード進行を読んでいけば、とりあえず歌伴はなんとかなる。

 

Key DやKey Aの曲という話は、自分で移調楽器を演奏した経験が無い方には理解しづらいだろう。ピアノのド(C)とトランペット・テナーサックスのレ(D)は、実は同じ高さの音である。つまり、ピアノとトランペット・テナーサックスは、ドの音が違うということ。この差を埋めるため、ピアノ用の譜面がハ長調(Key C)の場合、テナーサックスやトランペットはその全音1つ上の調を演奏している。

つまり、ピアノ用でKey D(#が2個)の曲の場合、テナーやトランペットだとKey E(#が4個)として演奏しなければならず、ピアノ用でKey A(#が3個)に至ってはKey B(#が5個)として演奏しなけりゃならないのだ。これは結構面倒くさい。

 

僕も大好きなWaveというボサノバの曲は、Key Dで演奏されることが多い。Key Eとしてテナーでも吹けなくはないが、Key Dのままのほうが、よほど楽に吹ける。あと、ジャズではあまりKey Aの曲って登場しないけれど、ポップス・ロック(要はギターが主役のジャンル)だとKey Aは多い。こんな場合にも、C管は楽だ。

 

ところで、僕のC管サックスは、1920年代のC.G.Conn製。この頃のConnのテナーといえば、なんといってもチューベリーだ。モデル名はNew Wonderなのだが、1930年代にこのテナーサックスを使って人気を博していたChu Berryというサックス奏者がいて、彼の名前で通じるようになってしまったという、珍しい機種。うるさ型の人に言わせると、チューベリーはテナーだけであり、アルトはチューベリーと呼んじゃいけないということらしい。

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北浦和なかざわ管楽器修理工房でオーバーホールと若干の近代化工事を行っていただいたのだが、上の画像は、その時にチューベリーと並べて撮影したもの。左がC管で、右がチューベリーだ。同じシリーズの楽器なので、よく似ている。

 

なお僕の楽器は、オリジナル性よりは使ってナンボなので、テーブルキーをもう少し使いやすくするため、こんな感じに軽く改造してある。

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まぁ、この程度だと、近代サックスとの差は埋まらないが、オリジナルの状態よりは少し演奏しやすくなった。

 

吹いた感じだが、僕はアルトに近いと思っている。だが、アルト吹きの友人(新品Cメロディのオーナー)が言うには、テナーに近いと。普段使っているサックスがテナーなのかアルトなのかで、感じ方が違ってくるようだ。

 

さて、最後にC管に対する僕の感想。テナーやアルトでできることは、C管でも大抵は可能なので、C管1本でサックス生活を送ることも可能だろう。だが、それ以上にテナーサックスの方が僕には魅力的。だからC管は、今後も限られた場面でしか使わないだろうなと思う。

 

サックス界の負け組、その名は

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今回のお題は、右側の銀色のサックス。左のアルトサックスと比べると、ネックが長いし、全体的にも少し大きい。

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 続いて、テナーと比べてみる。全体的に少し小さい。

 

管楽器の音の高さは、管の長さで決まる。ということは、この銀色のサックスが、アルトより低い音、テナーより高い音がでる楽器ということは容易に想像できる。でも普通にサックスの種類を問うた場合、高い方からソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4種類を挙げる人が大半だろうし、詳しい方の場合でも、せいぜいソプラニーノとバスまでだろう。

 

この銀色のサックスは、C-melody Saxと呼ばれるものだ。読んで字のごとく、C管ということが最大の特徴。つまり、他のサックスのような移調楽器では無い。ピアノ用の譜面をそのまま演奏に使える、便利なもの。各種サックスの中で、最も木管らしい音色と評する人もいる。

 

ちなみに僕が所有するC-melodyは、1920年代にアメリカのC.G.Conn社が製造したもの。C.G.Connといえば、Old American Saxの大手メーカーで、今でもアルトの6Mやテナーの10M、同じくテナーのチューベリ(New Wonder)は、この手のサックスが好きな人の間で人気が高い。なお1枚目の画像のアルトは6Mだ。

 

 このC-melodyサックスは、大半が1920年代から1930年代に製造されたものだ。それはなぜか?というと、ニーズがあまりなく売れなくなったからという答えになるのだろう。

 

こういった楽器のメインユーザーは吹奏楽団の団員だが、吹奏楽では移調楽器(ホルンやクラリネット)を使うのがあたりまえであり、使いなれないC調の楽器を敢えて使うほどの魅力は無かったということらしい。一方、アメリカの一般家庭向けにはある程度売れていて、ホームパーティーなどでアマチュアが演奏を楽しむ用途には向いていただろう。しかしその市場規模は限られており、やがてC-melodyは製造されなくなる。さしずめ、サックス界の負け組といったところか。

 

こんな事情で、現在C-melodyを使おうと考えると、中古を探すことになる。あまり使われず屋根裏部屋に眠っていたような楽器が中古市場に出回ることが多いため、製造年は大正から昭和の始めという古さながら、比較的状態のよい個体が多いようだ。とはいえ、入手したらオーバーホールは必須くらいに考えておいた方が良い。

 

マウスピースは、アルト用、テナー用のいずれかを使う。僕はアルト用を使っているが、テナー用という方も多い。いずれにしても、C-melody用ではないので一長一短があるのはやむを得ない。

 

さて、楽器が仕上がり、マウスピースもセットして、いざ楽器を手にしたその時、最大の難所が待ち構えている。それは、使いにくいテーブルキー。

 

本当は、大多数の方にとっては慣れないキー配置というのが正確な表現なのだろうが、近代的サックス(テーブルキーがセルマータイプ)でサックスを始めた人は、つかいにくいとしか思わないだろう。僕はもともとOld American Saxを愛用していたので、別に何とも思わなかったが、セルマーやヤナギサワ、ヤマハに慣れた方にとっては、使う気をなくさせるには充分な違和感だと思う。 

 

あと、何といっても100年近く昔の楽器なので、近代サックスよりも音程が緩い。自分で音程を決めに行かないと、正確な音程は維持できないので、演奏には気を遣う。

 

移調しなくてよいというメリットとその音色は、歌伴(うたばん)で威力を発揮するので、歌伴が好きな人ならば使っても良いように思うが、このような理由で、僕も他人(ひと)にはお勧めしない。ところが、その問題を解消する道を発見した友人がいる。

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右は僕のC-melody Saxで、左が友人のC-melody Sax。ベルの下に注目してほしい。B♭とBのキーが、両方とも管の右側に付いている。1930年頃のサックスは、管の両側に1つずつというのが標準。あと、この画像だとよく見えないかもしれないが、テーブルキーも近代的な配置になっている。実はこの友人のC-melodyは、新品なのだ。彼はこれを、ライブ演奏でも使うことがある。

 

さすがに、今でもC-melody Saxを作っているところは、僕もこの友人のサックスのメーカーしか知らない。中華製で、単に輸入しただけでは使い物にならず、ネックの真円度など細かい部分をリペアマンに調整してもらって、初めて使用に耐える楽器なので、やはり他人に積極的に勧める気にはならないのだが、近代的なサックスであることには変わりない。ただ、ちょっとだけ羨ましかったりする。

 

ハンドル周りがスッキリ

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 これは、僕が真夜中に自転車で走る時の装備。猫目のVOLTシリーズを3~4本装着し、更に照射角がVOLTより広めのHL-EL540RCも付けている。重量は1キロを軽く超えるレベルだが、夜間に街路灯の無い道をある程度のスピードで走ろうと思うと、このくらいは欲しくなる。

 これだけのライトをハンドルにセットすると、どうにもシフトワイヤー(ブレーキレバーの横から出ているもの)が邪魔に感じられる。シフトレバーはシマノのSORAだが、この一つ上のグレード(Tiagra)からは、シフトワイヤーもブレーキワイヤーと同じくハンドル沿いに装備できるのだ。そうすれば、ハンドルより前に、邪魔になるワイヤーの姿は見えなくなる。

 

 ということで、シフトレバーを105(Tiagraより一つ上のグレード)に交換した。交換前と交換後は、こんな感じになっている。

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かなりスッキリとした印象に変わった。とはいえ、この後に沢山のライトを装備するので、またゴテッとした感じに戻ることは確定。それだけが残念。

 

 

Mark7とB400のある生活

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 僕は現在、写真のテナー2本を、2か月くらいで交代させながら使っている。左はSelmer Mark7。多少なりとサックスの知識をお持ちの方であれば、Selmerというメーカー名は何度か目にしたことがあるだろう。サックスの定番メーカーと言っても過言ではないくらいに存在感のある、フランスのメーカー。右はBuescher 400という、古いアメリカ製のサックス。

 1920年代からアメリカでは、Buescher、C.G. Conn、Martin、King(H.N.WHITE)といったメーカーが、それぞれ特色のあるサックスを製作していた。オールド・アメリカンと呼ばれるサックスだ。今でもConnの6M(alto)、10M(tenor)やKingのSuper 20などは、ファンが多い。ただし、この一連のアメリカ製サックスは、現代のサックスとテーブルキーの配置が違っている。現代のヤマハやヤナギサワを使っている方が、予備知識無しでオールド・アメリカンを手にしても、運指に戸惑うだろう。

 僕が最初に入手したテナーはBuescherだった。その楽器でBuescherが気に入り、同社製品のトップモデルにあたる400を何年も探していたのだが、数が少ないため、なかなか出会えずにいた。ところが、一昨年と昨年、ひょんなことから400のアルトとテナーを入手。製造は1950年代だから、もう60年以上も前の楽器ということだが、問題なく使える。ダークな音色は、いかにもジャズ向け。ベル周りの補強や凝った彫刻、そしてキーガードを省略できるよう、ベルと二番管の間に向けて配置されたLow BとLow B♭のキーなど、現代のサックスよりも、かなり手間をかけて作られている様子が、見ているだけでも嬉しくなる。

 さて、Selmerの方だが、ジャズを演奏する人が好んで使うのは、Mark6かSBA。そのなかでもアメセルと呼ばれる物(フランスから部品の状態でアメリカに輸出し、アメリカで組み立て・塗装を行ったもの)の方が、より人気がある。これに対し、僕が使っているのはMark7という、Mark6の後に発売された機種で、アメセルでもない。ジャズをやる人には、人気があるとは言いがたい選択肢だ。シリアル番号が287千番台なので、製造年は1977年。楽器店の扱いでは、一応ビンテージサックスに分類される。

 ただ、これを入手した時、別にビンテージサックスが欲しかったわけではない。近代サックスを探しにいったのだが、結果としてMark7に魅せられてしまったのだ。

 きっかけは、Selmerのアルトを使っている某同居人が、テナーを吹いてみたいと言ったこと。その時、彼女が慣れている近代的なキー配列のサックス、つまりテーブルキーがSelmer Mark6と同じタイプのテナーが無かったことから、近代サックスを買う気になった。候補Selmerの中古で、SA80のシリーズ1か2。大久保の楽器店を回ったところ、シリーズ1は在庫が見つからない。このためシリーズ2を何本か試奏してみたのだが、どうにも音がきらびやか過ぎる気がしてしょうがない。そんな時、それほどシリーズ2と変わらない値段で出ていたMark7を見つけ、試奏で最初の音を出した瞬間に、シリーズ2よりも明らかに格上の、厚みのある音色にノックアウトされた。

 僕はBuescherのキー配置に慣れているため、Selmerのキー配置には多少違和感を感じたものの、並行して使っていれば、結構慣れた。良い楽器で、多くの方がSelmerを使っているのも納得できる。

マウスピースとの愛称も、Mark7は万能だから、クラシック系でもジャズ系でもフュージョン系でも、いずれもOK。僕の場合だとARBのメタルを合わせている。

  この2本を自由に使える今の環境って、けっこう贅沢だと思う。一人で練習を繰り返すだけでも楽しい。しかし、困ったことにこれではアルトやソプラノを吹く時間が取れない。どうしたものか(困)

 

  ちなみに、僕の本業楽器はトランペットであることを最後に主張しておく。この投稿だけ読んだ方は、そんなこと想像できないかもしれないけど。

 

 

 

天国と地獄までいかないが

午前2時に目が覚めたので、午前4時に川崎市の自宅を出発し、多摩川沿いを遡上してきました。最終的には、小河内ダムのあたりで折り返し。このあたり、トンネルが多いのですが、午前9時頃のこのあたり、自動車、それも大型自動車の通行量が多く、トンネルを走るのが少々恐いんですよね。

 

日が昇るまでは、気温が20度くらいなので、かなり快適なんだけれど、その後の帰途は、ひたすら蒸し暑さとの闘い。熱中症にならないよう、いかに蒸し暑さを凌ぐかというと、塩分タブレットと、水分補給と、日陰での休憩しか手立てが無い。

 

山中に居るうちは、まだ良いんだけれど、青梅市街地に降りて以降は、とにかく蒸し暑さが体に堪える。単純に言えば、天国と地獄なのだが、地獄の業火はさすがにこれより熱いだろう。体調が悪くならないよう、とにかく自分の体との対話に心がける。こんな環境で、よくも150キロを走ったものだ。

 

それにしても、ホイールとタイヤを柔らかいものに換えていたから、まだ耐えられる。これが元のホイール・タイヤだったら、体へのダメージが大きくて、途中でリタイアしていたかも。

 

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