新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

禁断症状?

2月にアルトサックス Buescher 400 TH&C を手放して、ソブラノサックスを買ったことは既に書いているとおり。
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当面はアルトを使うことが無いだろうと思っての選択だったが、いざ手放すと、ほどなくアルトを使いたくなる局面に遭遇。例えばラテン系バンドに一時参加したときは、テナーよりはアルトの音色の方が合いそうだった。また、平日の夜のジャズセッションで、荷物が大きくなるからとソプラノを持参した時に、やはりソプラノだけというのはちょっと厳しいなと痛感。あと、ポップスっぽい曲に挑戦してみたいという思いもある。そんなこんなで手放してから半年で、またアルトを入手した。

思い返してみれば、手元にアルトが無かった期間、何とはなしに"もの足りなさ"を感じていた気がする。普段は使わないのに、無いと不安とは、いったいどんな禁断症状なんだ。

今度のアルトは、近代的な楽器のヤナギサワA-902。アルトに有りがちな、金切り声のような音色は好まないが、これの音色は耳あたりが柔らかくて良い。手放したBuescher のアルトは、音色を好みのレベルまで詰められなかったので、演奏では殆ど使わなかったが、今度はもう少し使用頻度が上がりそう。
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Venova 国内発売に先駆けて演奏現場にデビュー

ヤマハが新たに作り出した、ちっちゃな管楽器、その名もVenovaが、いよいよ今月末に日本国内での販売が開始されます。「日本での発売が」とワザワザ付けているのは、すでに欧州で発売されているから。で、ウチには個人輸入したVenovaが既にあったりするわけで。 

 

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国内販売が近づくにつれて、徐々にメディアでVenovaが紹介されることが増えてきました。国内発売前とあって、個人がその使用感などを紹介するブログは少ないため、あるメディアで紹介された直後は、このブログの1日あたりアクセス数が20倍近くに跳ね上がったことに驚かされましたが、それだけ関心のある方は多いということなのでしょう。

 

サックスのプロ奏者の方がVenovaを演奏する動画がポチポチ公開されていますが、普通に吹いている様子を見て、「おおーっ、簡単そうじゃん」なんて思ったら大間違い。あの方々の楽器コントロール能力は、常人の想像を絶するところにあり、その能力をもってしてようやく、普通の演奏を実現せしめているわけです。普通の人が演奏するには、半音(ピアノの黒鍵の音)の音程コントロールがすごく難しい楽器なので、すぐあんな演奏ができると思ってVenovaを買ったら、盛大にガッカリすること間違いなし。

 

サックスのような円錐管楽器って、管の長さが短いほど、音程のコントロールに苦労するのです。だから、サックスの音程コントロールの難易度は、テナー < アルト < ソプラノ < ソプラニーノという順番。同じく円錐管楽器のVenovaは、僕の実感としてソプラノサックスよりコントロールが難しい。

 

さて、僕がVenovaを入手してから2か月が経過していますが、演奏現場でまともに使ったのは2回。最初は7月1日に松戸某所のジャズセッション。この時は、なんとVenova同士での2管という、なんとも廃人な組み合わせでジャズスタンダード"Bye Bye Black Bird"を演奏してました。おそらくは、国内でVenovaを演奏現場で使った人は既にいるのでしょうが、2管で演奏したというのは、おそらくこれが初めてぢゃないかと。

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2度めは8月5日に昭島市の某所ジャズセッション。周囲の皆様から「Venovaで一曲!」と指定されての演奏でしたが、伴奏はギター、ピアノ、ベース、ドラムと、フツーにジャズを演奏するときの構成で手抜き一切なし。お遊びというには気合いが入り過ぎた楽器編成で、これもメロディーがシンプルな"Smile"を演奏。

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いずれも、♭や♯が少ないメロディーの曲を選んだものの、アドリブに入るとさすがに♭や♯を多用せざるを得ないので、やはり苦戦します。僕自身はサックスを吹きますが、これとも運指が少し違うので、運指に慣れていないことと、音程コントロールの両方が奏者を苦しめる。いやいや、練習すりゃーイイだろうと言われると、一言も無いんですけどね。

 

さて、何か所かへVenovaを連れ出して、周囲の方の反応を見ているわけですが、もちろんサックス奏者は関心を示してくることが多い。しかしながら、それ以上に、サックス奏者じゃない方からの関心が、以外と高い気がします。ピアノやギター、ベースやドラムの方が、サブ楽器として興味を示すことが割と多い。コンパクトに持参できるサブ楽器として、ソプラノサックスじゃ高すぎるし難しそうだけど、これなら良さそうって思う方が多いのでしょう。ジャズセッションだと、ピアニストがサブ楽器として鍵盤ハーモニカを持参することがありますが、その選択と似たところがありそう。

 

音色は、好意的に感じる方の割合が結構高いです。僕自身は、今ひとつかなと思うものの、演奏している人と聞く人の、それぞれ聞こえる音色は少し違うので、そのあたりが僕と周囲の感想が異なる原因かもしれません。

 

持参がお手軽ということは、私も断言できますが、先に書いているとおり、音程のコントロールはシビアです。ましてクラシックのような、音程をビシッと合わせる必要のある用途には、まるで向きません。でも、音程のコントロールへの挑戦も含めて、気楽に楽しむための楽器ということで、ヤマハはこれを作っているようです。こんな本も早々に用意して、挑戦者を募っているようですし(笑)

先行して使ってみた僕からのアドバイスとしては、およそ1万円という価格で、もれなく修行の日々が付いてくるところに、自分が楽しみを見出せそうかどうか、お買い上げの前にぜひご検討下さいませ、といったところです。

 

 

 

ロードバイクでの夜間走行装備

最近はずっと楽器のことばかり書いているが、実はこのブログ、一番アクセスの多いページは「自転車で伊豆大島を一周する所要時間」で、その次が「ホイールをZondaに交換」だったりする。つまり、ここにアクセスしている方の過半数は、自転車ネタを求めているのだ。書いている本人の入れ込み具合から言えば、自転車よりも楽器の方にドップリ入れ込んでいるのだが、世間のニーズは楽器より自転車。というわけで、今回は久しぶりに自転車ネタを投下してみる。読者サービスとも言う(笑)

 

多くの方は、ロードバイクで夜間に走ろうとは思わないようだ。休日の昼間にはよくロードバイクを見かけるが、夜間になるとまず見かけなくなる。でも僕は夜間に走ることが多い。なぜかというと、装備さえキチンとしていれば、車の通行も少なくなっているので、案外と安全に、安心して走れるからだ。

 

例えば、梅雨が明けて本格的な夏を迎えた時に、炎天下で熱中症のリスクと戦いながら走るよりは、日が落ちた後の、車が少なくなった道を走る方が安全だし、より快適だと思う。

 

このため僕のロードバイクは、夜間走行に必要な装備を備えた状態をデフォルトとしていて、昼間に走る時はそこから予備ライトを外している。このことは、過去記事では書いていなかったから、この記事の画像を見て「脱着が大変そう」と思った方が多いかもしれない。

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 では、夜間走行に必要な装備とは何か。

 

まず、第一に必要なのは、必要な光量と照射領域と点灯時間を確保できるライト。単にライトを一つ付けておけば良いというモンじゃない。

 

僕の知る範囲だと、光量・照射領域・点灯時間の全てを必要な水準で満たす夜間走行用のライトは存在しない。このため、複数のライトを装備することで、ニーズに対応している。最も装備量がヘビーな、深夜に長距離を走行する場合のライト装備は、こんな感じ。

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全てライトはCats Eye製に統一していて、Volt800、Volt400×2本、HL-EL540RCの4灯をハンドル周りに装着。この他に、Volt700を前車輪軸に装着しているので、自転車本体に5灯と、更にヘルメットにVolt200を装着し、合計6灯で走行する。さすがに全部を同時に最大光量で点灯することは無く、最低でも1つは予備ライトとして、それぞれのライトも最小光量で点灯するから、対向車の目を晦ますほどではない。

 

ちなみに、全部のライトを点灯させると、こんな感じ。カメラの位置の関係で、まぶしく見えるが、基本的に光軸は前方20メートルに落とすことを目安としている。

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ちなみにライトのほか、ハンドルにはサイクリングコンピューター2つ(速度・距離の表示用とナビ用)と予備バッテリーを装着している。さすがにこれだけの電装品をハンドル周りに装着すると、だいぶメカメカしい光景となってしまう。

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第二は尾灯だ。電池切れのリスクを考えると、最低2つは欲しい。僕の場合は、自転車に2つと、ヘルメットに1つ付けている。

 

余談で多少脱線する。ロードバイクで時おり、1つだけ装備している尾灯を夜間に点滅させる方がいるが、都道府県の条例(道路交通規則等)に違反した状態であることが多い。ちょっと冗長ではあるが、根拠となる法令と条例(例として東京都のものを挙げる)を掲載しておこう。

 
(道路にある場合の灯火)
第十八条 車両等は、法第五十二条第一項前段の規定により、夜間、道路を通行するときは、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める灯火をつけなければならない。
一 ~ 四  (省略)
五  軽車両 公安委員会が定める灯火

 

東京都道路交通規則

(軽車両の灯火)
第9条 令第18条第1項第5号の規定により軽車両(牛馬を除く。)がつけなければならない灯火は、次に掲げるものとする。
(1) 白色又は淡黄色で、夜間、前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有する前照灯
(2) 赤色で、夜間、後方100メートルの距離から点灯を確認することができる光度を有する尾灯

 

重要なのは、この「点灯」というところ。点灯であって「点滅」ではない。ただ、交通規則の別の条項で、反射板を付けている自転車には尾灯の装備義務が免除される。このため、反射板を付けた自転車で尾灯を点滅させるのであれば、違反にならないというようにも読める。

 

いずれにしても、尾灯を点滅させたいのならば、2つ付けて片方を点滅させれば、条例違反にはならない。最近はやりのコンプライアンスとやらも、これで大丈夫。

 

第三は、反射ベスト。夜間に道路工事に従事する皆様が来ているアレの、もっと運動向きに作られているものが販売されている。いかに車の交通量が少なくなるとはいえ、運転手の注意力が散漫になりがちな時間帯でもあり、少しでも目立つようにしておきたい。

 

さて、第四より以降は必ずしも夜間専用の装備じゃない。どちらかというと、長距離を走るにあたって用心のための装備となる。なぜなら、夜間は自転車屋さんが開いていないから。

 

パンク対策用のグッズ

自転車用の簡易工具

いくばくかの粘着テープ

 

このくらいあれば、軽度のトラブルを凌いで走行を続けることができるだろう。粘着テープは、数十センチをフレームに巻き付けておけば、わざわざ荷物として持たなくても良い。

 

つらつらと自分の装備を書いてきたが、とりあえず夜間走行してみたいというだけならば、ライトは2つあれば良いだろう。ただ、ルーメン数の小さいライトだと、街路灯が貧弱な地域では役に立たなくなるので、最低でも200ルーメン級のライトが欲しい。

 

それでは、これからの季節、夜の涼しいライドを楽しみましょう。

 

定番は物欲を抑え込めるか

「管楽器と付き合ってゆくことは、物欲と付き合ってゆくということである。」

 

どこかの名言っぽく書いてみたが、なんのことはない、僕が自分の楽器遍歴を振り返ってみての、ただの感想だ。僕に限らず、まだ見ぬ理想の楽器を求めて楽器遍歴を続けている人は多い。それを一般的な言葉に置き換えると、物欲と戦い続けているとも言える。

 

ところで、管楽器の中には、定番と言われる機種が存在する。例えば、ジャズを演奏するサックス奏者にとってのアメセルMark6や、トランペット奏者にとってのBach 180ML37/25は、定番中の定番と言っても良い。それがなぜ定番と呼ばれるようになったかというと、よほどの底力と懐の深さを併せ持った楽器だからなのだろう。

 

僕の楽器遍歴では、近年まで意図的に定番を避けてきた。大体において定番楽器は、中古でもそんなに安くならない。それよりは、定番に引けを取らない実力は備えているが、人気がそれほど無い楽器を安く買うという路線。しかし、評価の物差しとして、定番楽器も使っておきたいと思い、Bach 180MLを中古で手に入れた。

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良く見ると、「37」の刻印の右側にGと表示されている。これはゴールドブラスというベルの材質を現すマーク。180MLの中でもド直球の定番はイエローブラスの37/25なのだが、37/25GBSPをワザワザ探してきたのは、天邪鬼な性格のなせるところ。

 

さて、すごく大雑把な言い方をすると、トランペットには2種類ある。軽い楽器と、重い楽器だ。重い楽器というのは、イメージ先行で表現すると、こんな感じのもの。

見るからに重たそう。量産型の3倍って、シャア専用ザクかよ!と突っ込みを入れたくなる。

 

 さすがに、こんな楽器ほどではないが、Bach 180MLも重い楽器として有名。これに対して僕は、YAMAHAの6310Zという超軽量級でトランペットを始めて以来このかた、軽い楽器しか吹いていない。そんな僕が重いBachを扱えるのか? そんな不安を覚えながら迎えた実際の演奏現場で、吹いてみてすぐに「これはイイものだ」と実感。

 

重いことは重い。しかし、操作性に結び付く重さなので、その重さに納得させられる。そして、次はどんな機種に換えてみようかと考えなくなった。これにはビックリ。どうやら、定番には物欲を抑制する効果もあるらしい。

 

しかし思い返してみると、サックスでは定番の一つ、セルマーのMark7を使っているのだが、次をどうしようという思いが時おり脳裏に浮かぶ。結局のところ、定番を買ってしまえば、それでもう浮気せずに済むとまでは言えないようだ。今後も物欲と付き合う人生は続く。

 

Venovaがやってきた

YAMAHA YVS-100 "Venova" といっても、ほとんどの方がご存じ無いだろう。管楽器界の大手メーカーたるヤマハが、2017年4月に欧州で発売を開始した、変わった形の管楽器のことである。

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吹き込み口のすぐ下に、見慣れない管が付いていることを除けば、リコーダーとサックスのコラボレーションと表現できるかもしれない。ソプラノサックスと比べてみよう。

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この楽器が欧州で発表された時の、紹介記事を見ると、この楽器の概要を知ることができる。

www.itmedia.co.jp

さて、これを書いている時点(2017年6月5日)では、日本でこの楽器を発売するというヤマハからのアナウンスが出されていない。だが、こういうキワモノ楽器が好きな僕としては、簡単に入手できるものなら、とりあえず入手してみたいと思う。このため、英国の通販会社に発注して、無事にVenovaは我が家へやってきた。

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ちなみに、僕は基本的に英語が書けないし、話せない。多少読むくらいが限界。そんな僕でも、問題なく取引ができた。ちなみにPaypalで日本円での支払額は、送料も含め1万2千円台。現地通貨での価格は、楽器本体が69.17ポンドに、送料が12ポンド。

 

 取扱説明書などは、日本語が完備しているので、ヤマハがその気になれば、いつでも国内販売できるように思えてしまう

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ソプラノサックス用の4Cのマウスピースと、Venova専用のリードと、Venova専用のスワブが付属品に含まれている。専用スワブは、上の紐部分が金属チェーンになっていて、湾曲したVenovaの内部を重さで通してゆくようになっている。

 

さて、少しずつ吹いてみての感想。運指はリコーダーともサックスとも、微妙に異なる。違う楽器なのだから、当然と言えば当然なのだが、サックスからの持ち替えで使うには、結構な練習が必要だと思う。運指も、説明書に書いてはあるものの、特に半音については、自分で工夫してより良い指使いを探す方が良い。なぜなら、全音の音程は悪くないが、半音の音程が、説明書のとおりだと微妙なのだ。アンブシュアで調整すると説明書では書いているが、指使いで何とかできるなら、その方が楽。実際、F♯は説明書どおりではない運指の方が、より楽に音程を合わせることができる。

 

音量は、それなりに出る。自宅で吹いていたら、某同居人から「家で吹くのは厳しい」と言われてしまった。ただし、ソプラノサックスほどの音量にはならない。

 

 マウスピースは、付属のマウスピースで問題なく音が出せる。しかし、手持ちのソプラノ用マウスピースを付けようと思うと、一気にハードルが上がってしまう。管の径が細くて、クラウドレイキーやオットーリンクだと、緩すぎるのだ。標準状態では、Oリングでマウスピースを固定しているが、サックス同様にネックコルクを巻いてみたいと思っている。しかし管体が樹脂製なので、サックスと同じように松脂で固定というわけにはいかないだろう。

 

 リードは、まだ付属品以外のものを試していない。付属品は、本体とのバランスが良いので吹きやすい。ただし、音色は自分の好みでは無い。このため、これをサックス用の葦のリードに換えたら、どう音色が変わるのかが今後の楽しみ。

 

古いけどOldじゃないBENGE

 管楽器ポートフォリオ改善の第二弾として、長らく使っていないトランペット1本と、現役で使っているトランペット1本を売却し、別のトランペットを1本入手してきた。

 

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 現役で使っていたBSCは、音色に厚みがあって良い楽器だったのだけれど、音のツボがどうにも自分と会わなかったので、いったん別の楽器に換えることを決意。BSC自体が珍しい楽器の部類に入るのだけど、ロクな予備知識も無く、試奏だけで購入を決意した楽器は、それに輪をかけて珍しい代物だった。

 

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この画像だけで「どれだけ珍しいか」が分かってしまったという方がいらしたら、とりあえずご安心下さい。貴方は立派なマニアです。そして、分からなかった貴方、この後も珍しさの最大のポイントは書いていませんので、「何が珍しいんだぁ~」と今後も悶え楽しんで下さい(笑)

 

そもそも、ベンジ(BENGE)なんて楽器メーカー、フツーの人は知らない。吹奏楽でトランペット吹いてました、といった方には、縁が無いだろう。吹奏楽ならヤマハかバック(Bach)の何れかを吹くことが多いし、ジャズを演るヒトでも、普通はそこにSchilke、KING、C.G.Connや、最近増えつつあるXO、Cannonballが加わる程度じゃないかと思う。カリキオだのマーチンだのベッソンだのといった、古い楽器に興味を覚えるようになって、初めて縁が出てくるメーカーの一つが、このBENGE。古いトランペットに関して、別に僕はマニアじゃないのだけれど、これまでに得ていた数少ない予備知識で、Old BessonやBENGEは音色が柔らかいと聞いていた。このため、店に出ていた数多の楽器の中からこれを選んで試奏したわけだ。新品で買うと50万円オーバーの楽器などとも吹き比べて、「これは良いものだ」(by マクベさん)との結論。

 

ちなみに、BENGEはOld Bessonのコピーからスタートしていたという話がある。同じくコピーの流れでOld BessonやOld BENGEは、BURBANK、KANSTULといったブランドと関係性があるらしい。ただ現在、この関係性を僕は整理できていないので、下手な解説はやめておこう。

 

さて、このBENGEというメーカー、もともと個人が創業した工房だったが、創業者が亡くなって後を継いだ二代目が会社を売り、その会社がトランペットやトロンボーンで有名なKING(H.N.White社)に買収された。そのKINGはUnited Musical Instruments, Inc.(UMI)に買収され、そしてUMIはSteinway Musical Instruments, Inc.に買収された。こうして今では、Steinway Musical Instruments, Inc.のグループ会社であるConn-Selmer, Inc.が所有するブランドの1つとなって今に至る。ちなみにこのConn-Selmer, Inc.が抱える楽器ブランドは数が多くて、トランペットで有名なVincent BachやHolton、Martinは、現在この会社が所有するブランドだったりする。

 

BENGEブランドで今でもトランペットは作られているらしいが、日本ではほとんど出回っていないし、普通のトランペットよりは、ポケットトランペットの方が有名かも。

 

今回、僕が入手した楽器は、KINGに買収されていた時期に製造されたもの。ベルの刻印にあるLOS ANGELESは、この時期の工場の所在地を現している。創業者が制作に関与していない時期の楽器なので、いわゆるOld BENGEではない。でも音色の硬さは、BSCなどの硬質な音色の楽器と比較すると、かなり柔らかくて、Old BENGEを彷彿とさせるものがある。制作年は1980年なので、冷静に考えれば古い楽器なのだが、銀メッキの楽器で手入れが十分なされているということもあって、状態はすごく良い。もっと新しい楽器と言われても信じてしまいそう。ちなみに拙宅のサックスは1920年代や1950年代のものが立派に現役なので、たかだか1980年の楽器は「古い」うちに入らないという話もある(笑)

 

さて、まだ吹き込んでいない状態だが、音色はフリューゲルホーンのYFH-731と近い気がする。ただ、この音色も、自分が慣れてくるに従って変わることがあるから、第一印象だけで決めつけない方が良い。

 

楽器は少し試奏しただけじゃ、自分との相性は分からないので、しばらくこのBENGEと付き合ってみる。引き続き使うかどうかは、いずれ他の楽器とのバランスも考えながら選ぶことになるだろう。

優等生、グズる

 2017年2月に入手したソプラノサックス、ヤマハのYSS-82ZRは基本的に優等生な楽器なので、演奏ではあまり神経質に扱わなくともOK。7年くらい前に入手したヤナギサワの初代テナー(マーチンのコピーモデル)は対照的で、音程が暴れまくりだったため、僕の技量では手に負えないと思い、1年くらいで手放したほどだ。そんな楽器を経験したこともあり、あまり神経質に扱わねばならない楽器は遠慮したい。その点、現代のヤマハの楽器は問題なし。

 しかし、そんな優等生のYSS-82ZRでも、たまにグズることはある。

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 その異変に気付いたのは、楽器店でのマウスピースの試奏中。オクターブキーを押しながらDからFくらいの音を出すと、いきなり上の倍音が出てくるようになった。具体的な例で、Middle Dの運指で吹くと、実際にはHigh Aの音が出るという状態。ただしGより上ならそんな症状は起きない。オクターブキーを押さずに吹けば、意図したとおりの音は出せるのだが、なんだかやりずらい感じ。「レ」だと思って吹いたら「ラ」が出る状況を想像してほしい。トランペットだと倍音のコントロールは「イロハのイ」にあたる技術だが、サックスでの倍音コントロールは、トランペットよりもだいぶ面倒くさいので、願わくばご遠慮いただきたい状況。

 

 試奏でマウスピースを交換したら発生した現象なので、てっきりそのマウスピースの特性なのかと思ったのだが、後日、普段使うマウスピースでも同じ症状が出て、これはマウスピースの問題じゃないと気付いた。経験上、こんな時はキーの動きがどこか変になっている。

 

 上のオクターブキーは、普段どおりに動いている。だがよく見ると、下のオクターブキーの動きが、何だかおかしい。一度開くと、そのままになっている。ということは、どこかのバネが外れている。下のオクターブキーの連接部をたどっていったら、原因は見つかった。

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 上のオクターブキーの直下のバネが、今回の原因。御覧のとおり、一体型のカーブドネックなので、異物の干渉を受けやすい場所にバネが付いている。おそらくはマウスピースを交換した時に指が触れたか、楽器を置いた時に異物が触れたことで、このバネが外れたのだろう。このバネを戻したら、すぐに以前の優等生に戻ってくれたので一安心。

 

 こんな構造上のリスクはあるものの、相性の良いマウスピースを付ければ、下から上までストレス無く音を出せるので、良い楽器だと思う。