新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

Mark7とB400のある生活

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 僕は現在、写真のテナー2本を、2か月くらいで交代させながら使っている。左はSelmer Mark7。多少なりとサックスの知識をお持ちの方であれば、Selmerというメーカー名は何度か目にしたことがあるだろう。サックスの定番メーカーと言っても過言ではないくらいに存在感のある、フランスのメーカー。右はBuescher 400という、古いアメリカ製のサックス。

 1920年代からアメリカでは、Buescher、C.G. Conn、Martin、King(H.N.WHITE)といったメーカーが、それぞれ特色のあるサックスを製作していた。オールド・アメリカンと呼ばれるサックスだ。今でもConnの6M(alto)、10M(tenor)やKingのSuper 20などは、ファンが多い。ただし、この一連のアメリカ製サックスは、現代のサックスとテーブルキーの配置が違っている。現代のヤマハやヤナギサワを使っている方が、予備知識無しでオールド・アメリカンを手にしても、運指に戸惑うだろう。

 僕が最初に入手したテナーはBuescherだった。その楽器でBuescherが気に入り、同社製品のトップモデルにあたる400を何年も探していたのだが、数が少ないため、なかなか出会えずにいた。ところが、一昨年と昨年、ひょんなことから400のアルトとテナーを入手。製造は1950年代だから、もう60年以上も前の楽器ということだが、問題なく使える。ダークな音色は、いかにもジャズ向け。ベル周りの補強や凝った彫刻、そしてキーガードを省略できるよう、ベルと二番管の間に向けて配置されたLow BとLow B♭のキーなど、現代のサックスよりも、かなり手間をかけて作られている様子が、見ているだけでも嬉しくなる。

 さて、Selmerの方だが、ジャズを演奏する人が好んで使うのは、Mark6かSBA。そのなかでもアメセルと呼ばれる物(フランスから部品の状態でアメリカに輸出し、アメリカで組み立て・塗装を行ったもの)の方が、より人気がある。これに対し、僕が使っているのはMark7という、Mark6の後に発売された機種で、アメセルでもない。ジャズをやる人には、人気があるとは言いがたい選択肢だ。シリアル番号が287千番台なので、製造年は1977年。楽器店の扱いでは、一応ビンテージサックスに分類される。

 ただ、これを入手した時、別にビンテージサックスが欲しかったわけではない。近代サックスを探しにいったのだが、結果としてMark7に魅せられてしまったのだ。

 きっかけは、Selmerのアルトを使っている某同居人が、テナーを吹いてみたいと言ったこと。その時、彼女が慣れている近代的なキー配列のサックス、つまりテーブルキーがSelmer Mark6と同じタイプのテナーが無かったことから、近代サックスを買う気になった。候補Selmerの中古で、SA80のシリーズ1か2。大久保の楽器店を回ったところ、シリーズ1は在庫が見つからない。このためシリーズ2を何本か試奏してみたのだが、どうにも音がきらびやか過ぎる気がしてしょうがない。そんな時、それほどシリーズ2と変わらない値段で出ていたMark7を見つけ、試奏で最初の音を出した瞬間に、シリーズ2よりも明らかに格上の、厚みのある音色にノックアウトされた。

 僕はBuescherのキー配置に慣れているため、Selmerのキー配置には多少違和感を感じたものの、並行して使っていれば、結構慣れた。良い楽器で、多くの方がSelmerを使っているのも納得できる。

マウスピースとの愛称も、Mark7は万能だから、クラシック系でもジャズ系でもフュージョン系でも、いずれもOK。僕の場合だとARBのメタルを合わせている。

  この2本を自由に使える今の環境って、けっこう贅沢だと思う。一人で練習を繰り返すだけでも楽しい。しかし、困ったことにこれではアルトやソプラノを吹く時間が取れない。どうしたものか(困)

 

  ちなみに、僕の本業楽器はトランペットであることを最後に主張しておく。この投稿だけ読んだ方は、そんなこと想像できないかもしれないけど。