新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

Buescher 400というビッグベルを収納できるケース

サックスの大きさって、同じテナーであっても機種によって部分部分が微妙に違う。この違いによってもたらされる悩みが、今回のお題。

 

僕の場合、Buescher 400とSelmer Mark 7 の2本を使っている。Mark 7のほうは、今や近代サックスのデファクト・スタンダードとも言えるSelmer Mark 6と寸法がさして違わないため、これに悩まされたことは無い。これに対し、Buescher 400はベルのサイズが大きい。Mark 7のベルが直径154ミリに対し、Buescher 400は直径164ミリと、10ミリだけ大きく作られている。俗にビッグベルとかラージベルと呼ばれるものだ。現在新品で販売されているものだと、カイルベルスやキャノンボールがビッグベルを採用している。

 

事情をご存じない方から見れば、わずか10ミリと思うだろう。だが、この10ミリが案外な財布へのダメージをもたらす。なぜなら、この10ミリのために使えない市販のセミハードケースが多い。

テナーサックスを買った時に入れられている木製のケース(ハードケース)は、かなり重いため、持ち運び用にセミハードケースやソフトケースを使うことが多い。しかし多くのセミハードケースはSelmerYamahaのサイズに合わせて製作されていて、ビッグベルのサックスを収納できないのだ。

 

例えば、品質で定評のあるProtec社のテナーサックスケースを見てみよう。

このProtec MX-305CTは、これを書いている時点(2016年8月14日)だと16,700円+送料で販売されている。 しかし残念なことにビッグベルは収納できない。このため、ビッグベルに対応したモデルを選択することとなる。それがこちら。

 

こちらのProtec PB-305CT XLは、これを書いている時点(2016年8月14日)で27,500円だ。わずか10ミリが、実に1万円の差となっている。

 

さすがにこれだけ差があると、安価に済ませるため「ビッグベル対応とは公表されていないが、実はビッグベルも収納できるセミハードケース」というものが存在しないか調べたくなるのは、人間の性(さが)だろう。

 

僕の場合、最初に入手した中古テナーサックスがビッグベルで、その楽器にセミハードケースも付いていた。よくある廉価なセミハードケースのGATERである。

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 このGATERにMark 7とBuescher 400を収納すると、このような感じになる。

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 ご覧のとおり、Mark 7だと周囲に余裕があるのに、Buescher 400はいかに窮屈そうに収まっている。

このGATERは、実はビッグベルに対応していない。そこで前のオーナーがどうしていたかというと、ベルの当たる部分に切れ込みを入れて、無理やり収納可能としてしまう荒業(笑) 上のBueshcer 400の画像でみると分かりにくいが、下のMark 7の画像をご覧いただくと、ベルの下側に不自然なくぼみが作られていることが分かるだろう。 

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そしてもう一つ、Buescher 400を収納できるケースを見つけた。それはSelmerのフライトケース。このケース、クッションの厚みがあるので、多少無理筋ではあるが、収納することは可能。その収納した様子がこちら。

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というわけで、ビッグベルのなかでもBuescher 400については、GATERとフライトケースを使うことが出来たという事例の紹介。

 

フライトケースは新品で買うと5万円以上するので、いきなりこれを選ぶ方はいないだろうと思うが、GATERは廉価なので、「これが使えればいいな」と思う方がいるだろう。しかしながらいずれの事例も、ケースが楽器を保護する能力は、通常の使用と比べ低下する。また、ビッグベルといってもBuescher 400以外の事例は紹介しておらず、それ以外のビッグベルサックスも同様に使えるかどうかは、やってみないとわからない。だからケース選択and改造の意思決定は、自身の危険負担(要は自己責任ってこと)で行っていただきたい。僕は自分の事例を紹介しているだけなので、ビッグベルユーザーにGATERやフライトケースの使用や改造を推奨しないし、誰かが僕の事例を真似して損害を受けても、その責を負う義務が僕に無いことは名言しておく。

 

少しのリスクも負いたくないのだったら、楽器店に自分のビッグベルサックスを持参し、収納できるかどうかを確認してから買えば良い。「これが収納できるかどうか、試してみたいんですけど」と店員さんに声をかけてみよう。多少高くつくかもしれないけど、大事な楽器を損傷するリスクを負うよりは良いでしょう。