新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

古いけどOldじゃないBENGE

 管楽器ポートフォリオ改善の第二弾として、長らく使っていないトランペット1本と、現役で使っているトランペット1本を売却し、別のトランペットを1本入手してきた。

 

jazzwombat.hatenablog.jp

 現役で使っていたBSCは、音色に厚みがあって良い楽器だったのだけれど、音のツボがどうにも自分と会わなかったので、いったん別の楽器に換えることを決意。BSC自体が珍しい楽器の部類に入るのだけど、ロクな予備知識も無く、試奏だけで購入を決意した楽器は、それに輪をかけて珍しい代物だった。

 

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この画像だけで「どれだけ珍しいか」が分かってしまったという方がいらしたら、とりあえずご安心下さい。貴方は立派なマニアです。そして、分からなかった貴方、この後も珍しさの最大のポイントは書いていませんので、「何が珍しいんだぁ~」と今後も悶え楽しんで下さい(笑)

 

そもそも、ベンジ(BENGE)なんて楽器メーカー、フツーの人は知らない。吹奏楽でトランペット吹いてました、といった方には、縁が無いだろう。吹奏楽ならヤマハかバック(Bach)の何れかを吹くことが多いし、ジャズを演るヒトでも、普通はそこにSchilke、KING、C.G.Connや、最近増えつつあるXO、Cannonballが加わる程度じゃないかと思う。カリキオだのマーチンだのベッソンだのといった、古い楽器に興味を覚えるようになって、初めて縁が出てくるメーカーの一つが、このBENGE。古いトランペットに関して、別に僕はマニアじゃないのだけれど、これまでに得ていた数少ない予備知識で、Old BessonやBENGEは音色が柔らかいと聞いていた。このため、店に出ていた数多の楽器の中からこれを選んで試奏したわけだ。新品で買うと50万円オーバーの楽器などとも吹き比べて、「これは良いものだ」(by マクベさん)との結論。

 

ちなみに、BENGEはOld Bessonのコピーからスタートしていたという話がある。同じくコピーの流れでOld BessonやOld BENGEは、BURBANK、KANSTULといったブランドと関係性があるらしい。ただ現在、この関係性を僕は整理できていないので、下手な解説はやめておこう。

 

さて、このBENGEというメーカー、もともと個人が創業した工房だったが、創業者が亡くなって後を継いだ二代目が会社を売り、その会社がトランペットやトロンボーンで有名なKING(H.N.White社)に買収された。そのKINGはUnited Musical Instruments, Inc.(UMI)に買収され、そしてUMIはSteinway Musical Instruments, Inc.に買収された。こうして今では、Steinway Musical Instruments, Inc.のグループ会社であるConn-Selmer, Inc.が所有するブランドの1つとなって今に至る。ちなみにこのConn-Selmer, Inc.が抱える楽器ブランドは数が多くて、トランペットで有名なVincent BachやHolton、Martinは、現在この会社が所有するブランドだったりする。

 

BENGEブランドで今でもトランペットは作られているらしいが、日本ではほとんど出回っていないし、普通のトランペットよりは、ポケットトランペットの方が有名かも。

 

今回、僕が入手した楽器は、KINGに買収されていた時期に製造されたもの。ベルの刻印にあるLOS ANGELESは、この時期の工場の所在地を現している。創業者が制作に関与していない時期の楽器なので、いわゆるOld BENGEではない。でも音色の硬さは、BSCなどの硬質な音色の楽器と比較すると、かなり柔らかくて、Old BENGEを彷彿とさせるものがある。制作年は1980年なので、冷静に考えれば古い楽器なのだが、銀メッキの楽器で手入れが十分なされているということもあって、状態はすごく良い。もっと新しい楽器と言われても信じてしまいそう。ちなみに拙宅のサックスは1920年代や1950年代のものが立派に現役なので、たかだか1980年の楽器は「古い」うちに入らないという話もある(笑)

 

さて、まだ吹き込んでいない状態だが、音色はフリューゲルホーンのYFH-731と近い気がする。ただ、この音色も、自分が慣れてくるに従って変わることがあるから、第一印象だけで決めつけない方が良い。

 

楽器は少し試奏しただけじゃ、自分との相性は分からないので、しばらくこのBENGEと付き合ってみる。引き続き使うかどうかは、いずれ他の楽器とのバランスも考えながら選ぶことになるだろう。