新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

定番は物欲を抑え込めるか

「管楽器と付き合ってゆくことは、物欲と付き合ってゆくということである。」

 

どこかの名言っぽく書いてみたが、なんのことはない、僕が自分の楽器遍歴を振り返ってみての、ただの感想だ。僕に限らず、まだ見ぬ理想の楽器を求めて楽器遍歴を続けている人は多い。それを一般的な言葉に置き換えると、物欲と戦い続けているとも言える。

 

ところで、管楽器の中には、定番と言われる機種が存在する。例えば、ジャズを演奏するサックス奏者にとってのアメセルMark6や、トランペット奏者にとってのBach 180ML37/25は、定番中の定番と言っても良い。それがなぜ定番と呼ばれるようになったかというと、よほどの底力と懐の深さを併せ持った楽器だからなのだろう。

 

僕の楽器遍歴では、近年まで意図的に定番を避けてきた。大体において定番楽器は、中古でもそんなに安くならない。それよりは、定番に引けを取らない実力は備えているが、人気がそれほど無い楽器を安く買うという路線。しかし、評価の物差しとして、定番楽器も使っておきたいと思い、Bach 180MLを中古で手に入れた。

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良く見ると、「37」の刻印の右側にGと表示されている。これはゴールドブラスというベルの材質を現すマーク。180MLの中でもド直球の定番はイエローブラスの37/25なのだが、37/25GBSPをワザワザ探してきたのは、天邪鬼な性格のなせるところ。

 

さて、すごく大雑把な言い方をすると、トランペットには2種類ある。軽い楽器と、重い楽器だ。重い楽器というのは、イメージ先行で表現すると、こんな感じのもの。

見るからに重たそう。量産型の3倍って、シャア専用ザクかよ!と突っ込みを入れたくなる。

 

 さすがに、こんな楽器ほどではないが、Bach 180MLも重い楽器として有名。これに対して僕は、YAMAHAの6310Zという超軽量級でトランペットを始めて以来このかた、軽い楽器しか吹いていない。そんな僕が重いBachを扱えるのか? そんな不安を覚えながら迎えた実際の演奏現場で、吹いてみてすぐに「これはイイものだ」と実感。

 

重いことは重い。しかし、操作性に結び付く重さなので、その重さに納得させられる。そして、次はどんな機種に換えてみようかと考えなくなった。これにはビックリ。どうやら、定番には物欲を抑制する効果もあるらしい。

 

しかし思い返してみると、サックスでは定番の一つ、セルマーのMark7を使っているのだが、次をどうしようという思いが時おり脳裏に浮かぶ。結局のところ、定番を買ってしまえば、それでもう浮気せずに済むとまでは言えないようだ。今後も物欲と付き合う人生は続く。