新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

ホンダ・シャトルと2代目プリウスの比較

ロードバイクを車内に積載でき、かつ立体駐車場もOKという条件で選択した車、ホンダ・シャトルが納車されてから千五百キロくらい走ったので、ぼちぼち第一印象を書いてみることにした。

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さて、まずロードバイクの積載だが、少なくともうちの場合、前輪を外せば全く問題ない。身長165センチの僕の場合、サドル位置はそのままで積載できる。ということで、これまで2度ほどロードバイクを積んで出かけた。

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 ちなみにロードバイクだと、それなりにトランクスペースを大きく占拠しているのだが、実用的最小折り畳み自転車のBromptonだと、こんな感じ。後部座席を畳まなくとも4台以上はイケそうだし、畳めば十台以上を軽く積めそうな感じで、どれだけBrompton、小さいんだか(笑) というか、後部座席を倒すと1,000リットル以上の容量を誇るシャトルの積載能力の大きさも、大概といえる。ここは現行のプリウスαでも太刀打ちできないところ。

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走行性能や燃費について、前の2代目プリウスと比較して、取り立てて不満は無い。川崎から金沢まで往復してきたが、腰を痛めるようなこともなく、快適に帰宅できた。ちなみに燃費の実績は、累積で1リットル当たり20キロ以上をキープしている。

 

運転席からの各種操作のインターフェース面では、残念ながら2代目プリウスの方が使いやすい。さすがトヨタといったところ。しばらくすればホンダのインターフェースに慣れるかと思ったが、2か月以上過ぎても慣れない。

 

ボトルケージの位置など、細かいところまで含め、2代目プリウスは良く出来た車だったということを、改めて知った。設計年次では10年の差がある2台だが、ホンダ車のインターフェースは、未だにトヨタの使いやすさには追い付いていないと評さざるを得ない。

 

動力性能というか、走り始めてからの力強さは同じ1500ccのハイブリッドでも、エンジン出力が大きいシャトルに軍配が上がる。だが、モーターの出力は2代目プリウスの方が大きいため、低速時にモーターだけで走る時間はプリウスの方が多く、これもあって低速時の挙動は2代目プリウスの方が滑らか。

 

自転車が積めるというメリットを抜きに比較すると、2代目プリウスの方が使いやすい車と、今の僕は考えている。

 

NANIWA EXP 還暦記念ライブ、行ってきた撮ってきた

10月29日に、Billboard TokyoでNANIWA EXPRESSのライブを観てきた。

NANIWA EXP は、1982年に結成されて1986年にいったん解散したフュージョンのグループ。僕が高校から大学にかけてのこの時期は、カシオペアに代表されるフュージョンの黄金期で、新聞のFM番組欄をエアチェック準備のため見ていると、「ナニワ」(当時はカタカナ表記だった)の文字はよく目にした記憶がある。

30年たった今では、僕がそうであるように、彼らもすっかりオッサンだ。メンバー5人のうち、すでに3人、まもなく1人、合計4人が還暦を迎えるとのことで、その記念ライブ。ちなみに、下の画像の左端に写っている青柳誠さん(key,sax)だけ55歳で、リーダーの清水興さん(b)からは「5年後にまた還暦記念ライブやったる」との宣言が飛び出した。

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Billboard Tokyo は、普段は録音録画お断りの場所なのだが、今回はリーダー清水興さんから「撮影OKだし、ネットへのアップも構へんでぇ~」とのお墨付きが、何時ものように出されたので、遠慮なくハンディカメラで録画させていただいた。なお、その一部はYoutubeで公開している。

NANIWA EXP " Believin' " on Billboard Tokyo / Oct 29 2016 - YouTube

NANIWA EXP " 大宇宙無限力神 " on Billboard Tokyo / Oct 29 2016 - YouTube

僕も、4百人くらいのステージやジャズセッションで演奏した経験があるのだが、その体験を踏まえ、この5人の演奏はつくづくスゲーなと思ってしまう。本当にね、音で遊んでいるという、いかにも楽しくやっている感じが、聴いている側にビシビシ伝わってくるんですよ。ステージ上での各種の音楽的やりとりが、たっぷりとした余裕の中で行われていて、でもそれは漫然としたものではなく、良い緊張感を必ず伴っている。こういったレベルの演奏は、なかなか出来るものじゃない。

還暦記念ライブということで、メンバーの大半が60歳だが、僕が30年前に抱いていた60歳のイメージと大幅にかけ離れている。オッサン達がステージ上で余裕をかましながら音楽で遊んでいる姿は、カッコ良いとしか言えない。自分もこんなカッコ良いオッサンになれるのだろうか。

 

僕が観ていたのは1st set で、ライブ後のサイン会が終わった後、一緒にライブを観にいった仲間と3人で楽屋の青柳誠さんを訪問。ライブで使用されていたテナーサックスとソプラノサックスを撮影させていただく。

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ちなみに、僕らが楽屋訪問できることになったのは、昨年僕が入手したテナーサックス(セルマーのMark7)を起点とした縁によるもの。そのテナーサックス、僕が石森管楽器で購入する前は青柳誠さんが30年くらい使用していたもので、付属していたフライトケースも青柳さんが使用していたものだった。それまでは、青柳さんの名前も、何をやっている方かも全く知らない状態だったのだが、そこから某同居人経由で縁がつながり、今回の楽屋訪問に至る。

以前は自身で使っていたフライトケースにサインをいただいた時は、「何だか妙な感じ」とおっしゃっていた。確かに、多少気恥ずかしい状況かもしれない。

 

青柳さんは現在、石森管楽器の Woodstone ブランドのテナーサックスを使用されている。ソプラノの方は、シルバープレートのストレートネックで、おそらくはセルマーのSA80だろうと思うのだが、よく分からなかった。

 

などと、つらつら書いてきたが、実は僕がNANIWA EXP の曲を初めて聴いたのが、実はMark7を入手した後だったりする。それまでは、何となく聴く機会がなかったのだが、惜しいことをしていた。こういうのを聴くと、自分でもやってみたくなる。長期的課題が、また一つ増えたようだ。

 

自転車の周辺アクセサリとしての自家用車選び

拙宅では、2代目のトヨタ・プリウスを愛用中。現行モデルが4代目になるので、すでに2代前のモデルということになる。

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普段使いには、不満と呼べるほどの難点が無いので、良い車だと思う。しかしそれは、僕が自転車(ロードバイク)に乗る前の話。今は、ロードバイクを室内へ車載するのに難ありという、唯一にして結構大きな弱点を抱えた存在。初期のハイブリッド車の弱点として、荷室の床下に大きな電池を積んでいるため、通常の車ほど背の高い荷物は載せることができないのだ。従って今は、輪行袋に入れた自転車を横倒しにして積んでいる。載せる自転車が1台なら、まあ良いのだが、うちには2台ある。キャリアで屋根上に車載するのは、心情的にかなり抵抗があり、できれば避けたい。

 

この2代目プリウスが、近々3度目の車検を迎える。自転車に乗っていなければ、迷うことなく車検を通すのだが、自転車の車載と、今後のメンテナンスを考え、次の車を考えることにした。

 

自転車の車載だけを考えるならば、背の高い車(マツダのCX-5とかミニバン)にすれば良いのだが、拙宅の場合には、このような関門が待ち構えている。

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そう、昔の5ナンバー乗用車サイズの立体駐車場に入る車でなくてはならないのだ。制限車高1550ミリと書かれていて、実際問題としても1700ミリが限度だから、身長165センチの僕より背の高いミニバンは軒並みアウト判定。ちょうど9/10にモデルチェンジしたモデルが発売されたホンダのフリードなど、ちょうど良いサイズなんだけど、やはり高さが問題になる。

 

車幅に関して言うと、今の2台目プリウスは一応3ナンバーであるものの、全幅が1725ミリなのでOK。だが最近の車は、ややもすると全幅が1800ミリなんてのがザラに存在している。最近のマツダ車は、これで大半がOUTになった。

 

買い替え候補に挙げたプリウスαをこの立体駐車場に入れてみる。

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全幅1775ミリのこの車は、かろうじて収まっている。しかし、この立体駐車場に慣れた僕であっても、車庫入れは相当気を遣わなければならない。これ以上幅の広い車は無理だ。

実はこのプリウスα、立体駐車場に収まった時点では、ほぼこれにしようと思っていた。しかしこの後、実際に自転車を前輪だけ外した状態で載せてみたら、高さが足りないことが判明。

一応、後輪を外してこんな金具を付ければ、入らないことも無い。

でも、これを2台分置いておくのも、邪魔になる。後輪を外さなくても入る候補車が現れたため、プリウスαは 次期FX最有力候補の座を明け渡すことになった。

 

まあ、自転車の搭載能力の他にも、いくつか選択のポイントはあるのだが、希望としてはハイブリッド車の方が良い。走行距離はあまり長くないので、燃費による燃料代差額で価格差を カバーできるとは思っていない。それよりも、貧乏性の僕はハイブリット車に乗る前、車が坂を下るときのエネルギーを回収できないことを、実にもどかしく感じていたので、その思いに逆戻りしたくないだけだ。

 

さて、それでは最後に次期FXの座を手中にした車は何か?

 

それはホンダ シャトル です。

www.honda.co.jp

まだ納車まで、しばらく日があるので、実車レポートはできないけど、2列シート同士で比較しても、プリウスαよりも荷室の使い勝手が良さそうだった。5ナンバーで高さも1545ミリだから、うちの立体駐車場にも問題なし。長距離走行での燃費は、今のプリウスよりも伸びそう。そして、ロードバイク2台を室内に楽に積載できる。

 

実は僕が一番最初に買った自家用車が、ワンダーシビックのシャトルだった。

b-cles.jp

ボディ形状のコンセプトは、今のシャトルとほぼ一緒だろう。20年を経て、シャトルに還ることにしたのには、何か縁のようなものを感じる。

 

さて、今月中には納車される予定なので、自転車を積んで遠出するのが楽しみだ。

 

Bob Mintzerのトラウマ疑惑

僕は長らく、サックスを誰にも習わず、何の教本も使わずに吹いてきた。体験レッスンに行ってみたとか、チョロっと教本を触ってみたなんて程度の話はあったものの、実質的には独学だ。だが、このままではイカンと思い、先日こんな教本を買った。

 

著者のBob Mintzerについて、Word of Mouth Big Bandのテナーサックス奏者として知っていたが、演奏活動でも作曲・編曲でも音楽教育でも有名な方らしい。原著は1990年代に出版されていたようだが、邦訳は今年に入って出版された。目次など見ると、ありがちなサックス教本と違い、僕が求める内容に近いかもしれないと期待したので、密林(amazon)でポチっと注文したわけだ。

 

どんな内容か興味をお持ちの方のために、目次部分を掲載しておく。

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いかがだろう。独学で適当にやってきた僕は、このような内容にそそられてしまった。ロングトーンをこの教本に沿って1時間ほどやってみたが、全部は終わらない上に、腹筋も痛くなってきた。だが、この内容をこなせるようになれば、もっと良い音を出せそうな気がする。

 

さて、今回のお題はChapter 15「音楽学校では教えないこと-私の経験談」だ。

Jaco Pastoriusのビッグバンドで活動していた方なので、波乱万丈いろいろあったことだろうとは思うのだが、体験談にかなり異質な一項目があった。「ミュージシャンとしてやってはいけないこと」を5つ書いていたうちの、最初の3つを抜粋する。

 

/*引用開始*/

やってはいけないこと

1.自分の演奏に不満足でも、リスナーにそれを見せては(伝えては)いけません。演奏を聴いて楽しんでいるリスナーに悪影響を与えてしまいます。

2.公の場では、音楽全般に関して悪口や不平不満を言わないようにしましょう。

3.結婚式で後期Coltraneのような演奏はしないようにしましょう。

/*引用終了*/

 

上2つで良いこと言っているのに、3つ目でオチを付けてどうする(笑)

 

一応ご当人の名誉のために付け加えると、残り2つも良いこと言っているし、「やるべきこと」も良いことを言っている。なぜ1つだけ変なことを書く?

 

ちなみに、Wikipediaに掲載されている分類で、Coltraneの後期の演奏というと、名高い「痴情の愛」「至上の愛」"A Love Supreme"からフリージャズ期に入るまでのことを指しているようだが、僕の想像するに、Bobが「後期Coltrane」と言っているのは、おそらくフリージャズ期、そう、あの悪名高き"Ascension"から始まる時代のこんなのも含めての話だと思う。

 

それはさぁ、さすがにイカンよ。人様の結婚式で、こんなの演(や)っちゃ。自分の結婚式だったら、なおさらだ(自爆)

 

僕は"A Love Supreme"が好きだが、さすがに結婚式でスピリチュアルな演奏を延々と聴かされるのもアレだし、こんなのだったら新郎新婦及びご列席の皆様が気の毒すぎる。

 

でも、ここにわざわざ書くってことは、若気の至りで、やっちまったってことだよね。きっとその後の皆様の反応が、Bobのトラウマになっているのかもしれない。


 まぁ、アレな話はともかくとして、教本としては真っ当なので、ご安心下さい。決してスピリチュアルな演奏の教本ではありません。

 

Buescher 400というビッグベルを収納できるケース

サックスの大きさって、同じテナーであっても機種によって部分部分が微妙に違う。この違いによってもたらされる悩みが、今回のお題。

 

僕の場合、Buescher 400とSelmer Mark 7 の2本を使っている。Mark 7のほうは、今や近代サックスのデファクト・スタンダードとも言えるSelmer Mark 6と寸法がさして違わないため、これに悩まされたことは無い。これに対し、Buescher 400はベルのサイズが大きい。Mark 7のベルが直径154ミリに対し、Buescher 400は直径164ミリと、10ミリだけ大きく作られている。俗にビッグベルとかラージベルと呼ばれるものだ。現在新品で販売されているものだと、カイルベルスやキャノンボールがビッグベルを採用している。

 

事情をご存じない方から見れば、わずか10ミリと思うだろう。だが、この10ミリが案外な財布へのダメージをもたらす。なぜなら、この10ミリのために使えない市販のセミハードケースが多い。

テナーサックスを買った時に入れられている木製のケース(ハードケース)は、かなり重いため、持ち運び用にセミハードケースやソフトケースを使うことが多い。しかし多くのセミハードケースはSelmerYamahaのサイズに合わせて製作されていて、ビッグベルのサックスを収納できないのだ。

 

例えば、品質で定評のあるProtec社のテナーサックスケースを見てみよう。

このProtec MX-305CTは、これを書いている時点(2016年8月14日)だと16,700円+送料で販売されている。 しかし残念なことにビッグベルは収納できない。このため、ビッグベルに対応したモデルを選択することとなる。それがこちら。

 

こちらのProtec PB-305CT XLは、これを書いている時点(2016年8月14日)で27,500円だ。わずか10ミリが、実に1万円の差となっている。

 

さすがにこれだけ差があると、安価に済ませるため「ビッグベル対応とは公表されていないが、実はビッグベルも収納できるセミハードケース」というものが存在しないか調べたくなるのは、人間の性(さが)だろう。

 

僕の場合、最初に入手した中古テナーサックスがビッグベルで、その楽器にセミハードケースも付いていた。よくある廉価なセミハードケースのGATERである。

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 このGATERにMark 7とBuescher 400を収納すると、このような感じになる。

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 ご覧のとおり、Mark 7だと周囲に余裕があるのに、Buescher 400はいかに窮屈そうに収まっている。

このGATERは、実はビッグベルに対応していない。そこで前のオーナーがどうしていたかというと、ベルの当たる部分に切れ込みを入れて、無理やり収納可能としてしまう荒業(笑) 上のBueshcer 400の画像でみると分かりにくいが、下のMark 7の画像をご覧いただくと、ベルの下側に不自然なくぼみが作られていることが分かるだろう。 

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そしてもう一つ、Buescher 400を収納できるケースを見つけた。それはSelmerのフライトケース。このケース、クッションの厚みがあるので、多少無理筋ではあるが、収納することは可能。その収納した様子がこちら。

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というわけで、ビッグベルのなかでもBuescher 400については、GATERとフライトケースを使うことが出来たという事例の紹介。

 

フライトケースは新品で買うと5万円以上するので、いきなりこれを選ぶ方はいないだろうと思うが、GATERは廉価なので、「これが使えればいいな」と思う方がいるだろう。しかしながらいずれの事例も、ケースが楽器を保護する能力は、通常の使用と比べ低下する。また、ビッグベルといってもBuescher 400以外の事例は紹介しておらず、それ以外のビッグベルサックスも同様に使えるかどうかは、やってみないとわからない。だからケース選択and改造の意思決定は、自身の危険負担(要は自己責任ってこと)で行っていただきたい。僕は自分の事例を紹介しているだけなので、ビッグベルユーザーにGATERやフライトケースの使用や改造を推奨しないし、誰かが僕の事例を真似して損害を受けても、その責を負う義務が僕に無いことは名言しておく。

 

少しのリスクも負いたくないのだったら、楽器店に自分のビッグベルサックスを持参し、収納できるかどうかを確認してから買えば良い。「これが収納できるかどうか、試してみたいんですけど」と店員さんに声をかけてみよう。多少高くつくかもしれないけど、大事な楽器を損傷するリスクを負うよりは良いでしょう。

 

引き続き負け組サックス

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前回の記事では、ひとごとのようにC管(C-melody)サックスの基礎知識的な話を書いていたが、今回は自分のこととして書いてみる。

 

僕がC管を使うのは、こんなときだ。

  • 歌伴確定の演奏現場
  • Key DやKey Aの曲を演奏
  • 他にテナーやアルトが沢山いるセッション現場

逆に、こんな状況じゃ無い場合には、テナーとトランペットの組み合わせが一番しっくりくる。というわけで、僕がC管を使う頻度は、年に1~2度といったところ。

 

歌伴は、C管が最も威力を発揮する用途だ。個人的にトランペットは歌伴向きじゃないと思っているため、歌伴がある場合は、フリューゲルホーンかサックスを使っている。移調楽器(テナーサックスやアルトサックス、トランペット)だと、ボーカリストが持参した、初見で演奏しなければならない譜面に対して、更にコード読み替えという手間が加わるのだが、C管サックスにはこれが不要。だから、譜面のコード進行を読んでいけば、とりあえず歌伴はなんとかなる。

 

Key DやKey Aの曲という話は、自分で移調楽器を演奏した経験が無い方には理解しづらいだろう。ピアノのド(C)とトランペット・テナーサックスのレ(D)は、実は同じ高さの音である。つまり、ピアノとトランペット・テナーサックスは、ドの音が違うということ。この差を埋めるため、ピアノ用の譜面がハ長調(Key C)の場合、テナーサックスやトランペットはその全音1つ上の調を演奏している。

つまり、ピアノ用でKey D(#が2個)の曲の場合、テナーやトランペットだとKey E(#が4個)として演奏しなければならず、ピアノ用でKey A(#が3個)に至ってはKey B(#が5個)として演奏しなけりゃならないのだ。これは結構面倒くさい。

 

僕も大好きなWaveというボサノバの曲は、Key Dで演奏されることが多い。Key Eとしてテナーでも吹けなくはないが、Key Dのままのほうが、よほど楽に吹ける。あと、ジャズではあまりKey Aの曲って登場しないけれど、ポップス・ロック(要はギターが主役のジャンル)だとKey Aは多い。こんな場合にも、C管は楽だ。

 

ところで、僕のC管サックスは、1920年代のC.G.Conn製。この頃のConnのテナーといえば、なんといってもチューベリーだ。モデル名はNew Wonderなのだが、1930年代にこのテナーサックスを使って人気を博していたChu Berryというサックス奏者がいて、彼の名前で通じるようになってしまったという、珍しい機種。うるさ型の人に言わせると、チューベリーはテナーだけであり、アルトはチューベリーと呼んじゃいけないということらしい。

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北浦和なかざわ管楽器修理工房でオーバーホールと若干の近代化工事を行っていただいたのだが、上の画像は、その時にチューベリーと並べて撮影したもの。左がC管で、右がチューベリーだ。同じシリーズの楽器なので、よく似ている。

 

なお僕の楽器は、オリジナル性よりは使ってナンボなので、テーブルキーをもう少し使いやすくするため、こんな感じに軽く改造してある。

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まぁ、この程度だと、近代サックスとの差は埋まらないが、オリジナルの状態よりは少し演奏しやすくなった。

 

吹いた感じだが、僕はアルトに近いと思っている。だが、アルト吹きの友人(新品Cメロディのオーナー)が言うには、テナーに近いと。普段使っているサックスがテナーなのかアルトなのかで、感じ方が違ってくるようだ。

 

さて、最後にC管に対する僕の感想。テナーやアルトでできることは、C管でも大抵は可能なので、C管1本でサックス生活を送ることも可能だろう。だが、それ以上にテナーサックスの方が僕には魅力的。だからC管は、今後も限られた場面でしか使わないだろうなと思う。

 

サックス界の負け組、その名は

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今回のお題は、右側の銀色のサックス。左のアルトサックスと比べると、ネックが長いし、全体的にも少し大きい。

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 続いて、テナーと比べてみる。全体的に少し小さい。

 

管楽器の音の高さは、管の長さで決まる。ということは、この銀色のサックスが、アルトより低い音、テナーより高い音がでる楽器ということは容易に想像できる。でも普通にサックスの種類を問うた場合、高い方からソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4種類を挙げる人が大半だろうし、詳しい方の場合でも、せいぜいソプラニーノとバスまでだろう。

 

この銀色のサックスは、C-melody Saxと呼ばれるものだ。読んで字のごとく、C管ということが最大の特徴。つまり、他のサックスのような移調楽器では無い。ピアノ用の譜面をそのまま演奏に使える、便利なもの。各種サックスの中で、最も木管らしい音色と評する人もいる。

 

ちなみに僕が所有するC-melodyは、1920年代にアメリカのC.G.Conn社が製造したもの。C.G.Connといえば、Old American Saxの大手メーカーで、今でもアルトの6Mやテナーの10M、同じくテナーのチューベリ(New Wonder)は、この手のサックスが好きな人の間で人気が高い。なお1枚目の画像のアルトは6Mだ。

 

 このC-melodyサックスは、大半が1920年代から1930年代に製造されたものだ。それはなぜか?というと、ニーズがあまりなく売れなくなったからという答えになるのだろう。

 

こういった楽器のメインユーザーは吹奏楽団の団員だが、吹奏楽では移調楽器(ホルンやクラリネット)を使うのがあたりまえであり、使いなれないC調の楽器を敢えて使うほどの魅力は無かったということらしい。一方、アメリカの一般家庭向けにはある程度売れていて、ホームパーティーなどでアマチュアが演奏を楽しむ用途には向いていただろう。しかしその市場規模は限られており、やがてC-melodyは製造されなくなる。さしずめ、サックス界の負け組といったところか。

 

こんな事情で、現在C-melodyを使おうと考えると、中古を探すことになる。あまり使われず屋根裏部屋に眠っていたような楽器が中古市場に出回ることが多いため、製造年は大正から昭和の始めという古さながら、比較的状態のよい個体が多いようだ。とはいえ、入手したらオーバーホールは必須くらいに考えておいた方が良い。

 

マウスピースは、アルト用、テナー用のいずれかを使う。僕はアルト用を使っているが、テナー用という方も多い。いずれにしても、C-melody用ではないので一長一短があるのはやむを得ない。

 

さて、楽器が仕上がり、マウスピースもセットして、いざ楽器を手にしたその時、最大の難所が待ち構えている。それは、使いにくいテーブルキー。

 

本当は、大多数の方にとっては慣れないキー配置というのが正確な表現なのだろうが、近代的サックス(テーブルキーがセルマータイプ)でサックスを始めた人は、つかいにくいとしか思わないだろう。僕はもともとOld American Saxを愛用していたので、別に何とも思わなかったが、セルマーやヤナギサワ、ヤマハに慣れた方にとっては、使う気をなくさせるには充分な違和感だと思う。 

 

あと、何といっても100年近く昔の楽器なので、近代サックスよりも音程が緩い。自分で音程を決めに行かないと、正確な音程は維持できないので、演奏には気を遣う。

 

移調しなくてよいというメリットとその音色は、歌伴(うたばん)で威力を発揮するので、歌伴が好きな人ならば使っても良いように思うが、このような理由で、僕も他人(ひと)にはお勧めしない。ところが、その問題を解消する道を発見した友人がいる。

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右は僕のC-melody Saxで、左が友人のC-melody Sax。ベルの下に注目してほしい。B♭とBのキーが、両方とも管の右側に付いている。1930年頃のサックスは、管の両側に1つずつというのが標準。あと、この画像だとよく見えないかもしれないが、テーブルキーも近代的な配置になっている。実はこの友人のC-melodyは、新品なのだ。彼はこれを、ライブ演奏でも使うことがある。

 

さすがに、今でもC-melody Saxを作っているところは、僕もこの友人のサックスのメーカーしか知らない。中華製で、単に輸入しただけでは使い物にならず、ネックの真円度など細かい部分をリペアマンに調整してもらって、初めて使用に耐える楽器なので、やはり他人に積極的に勧める気にはならないのだが、近代的なサックスであることには変わりない。ただ、ちょっとだけ羨ましかったりする。