新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

贅沢な造りのBuescher 400

今更ながらの話なのだが、2020年8月から2021年2月まで、テナーサックスのレッスンを受けていた。10年以上も前に、見様見真似でサックスを始めて、そのまま自己流で続けてきたのだが、どこかのタイミングで何か月か基礎を習った方が良いと思っていて、ようやく重い腰を上げた形になる。

 

テーブルキーの操作性を統一しておくため、レッスンを受講していた期間中はSelmer Mark7かYAMAHA 82Zだけを使っていた。しかし最近、最終レッスンが終わったので、久しぶりにBuescher 400(以後B400と記載する)を取り出し吹いてみた。やはり現代サックスとは違う魅力を持つ、つくづく良い楽器だと再認識。

 

テーブルキーの操作性を除けば、使いにくいなんてことは無いし、今のサックスより軽い。そして何より、独特の工夫だが今のサックスには見られない仕様が散見されるところが、現代においては見る者に、技術の無駄遣い加減というか、何とも言えぬ贅沢さを感じさせてくれる。

 

Buescherというメーカーは、1900年代にアメリカで金管楽器木管楽器を製造していたのだが、1964年頃にUSA Selmer社に買収され、その数年後には合併されて消滅した。

 

自社ブランドだけでなく、製造工場を持たないブランドのためにOEMでも沢山の管楽器を製造している。 また、いわゆる「アメセル」(フランスから部品状態で輸入され、アメリカで組み立てられたSelmar製サックス)の組み立てを同社が行っていたとも言われている。

 

独自の構造として、サックスのキーカップにSnap on Pad機構を採用していたことでも知られている。次の画像で、ベルの上に乗せてあるのがSnapと呼ばれる金具。画像のSnapは裏返しになっていて、中央に留め具がある。パッドの中央に穴をあけ、Snapの留め具をその穴に通し、キーカップ側に溶接された凸部で接合することで、松脂や接着剤を使わずにパッドを固定するための機構。簡単にパッドを交換できるという利点はあるのだが、松脂を使ってパッドを固定する方が、トーンホールとパッドがより密着するように調整することが可能なので、パッド交換時にリペアマンの手間を増やし、調整料金が他メーカーのサックスより多少高くなるという結果を生んでいる。このため、この機構を除去して、穴を開けずにパッドを付けられるよう改造している人もいるようだ。

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そんな、不便な面もあるのだが、一方で、通常よりも重量のあるメタルリゾネーターという性質もあることから、僕はオリジナルのままで使っている。

 

トランペットのチェット・ベイカーが、Buescherのユーザーとして有名。サックスについて言うと、ソニー・ロリンズがBuescherの"Big B"と称されるモデルを吹いていた時期があり、チャーリー・パーカーがB400のアルトを吹いている写真も残されている。また、エリントン楽団は一時期、サックスセクションをBuescherで統一していた。

  

さて、B400という楽器だが、1940年代から1960年代にかけてBuescher社が生産していたサックスの一モデルである。同じ時期に並行して生産されていたAristcratモデルは、ライバルであったKing(H.N.WHITE)、ConnやMartinと比較しても、比較的保守的な設計(ただしSnap on Pad機構を除く)であったが、B400は実験的というか、意欲的な仕様を持つモデルだ。中でもTop Hat and Caneと呼ばれる、シルクハットと杖の彫刻がベルに施されたモデルは、これが無いB400よりもかなり人気が高い。

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B400の最大の特徴は、全体画像をご覧いただくとすぐ分かるのだが、Low BとLow B♭のキーカップがベルの背面(ベルと二番管の間)にあること。"Behind Bell"と呼ばれる構造で、これがために、キーシャフトの配置はかなり複雑なものとなったが、代わりにキーガードは省略できている。僕の知る範囲で、このBehind Bell構造を採用したサックスは、B400の他には、同じBuescherのAristcrat series 4 だけ。

 

日本にも輸入されていたが、現在、中古市場でその姿を見る機会は少ない。そして、アルト以上にテナーは姿を見ない。そんな中、僕は一時期、B400 Top Hat and Caneのアルトとテナーを同時に所有していたことがある。

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先にe-bayでアルトを入手していたのだが、ある日、ホームページでB400テナーが売り出されたことを知って旧知の楽器店を訪れると、なんとホームページにまだ掲載していないものもあったという状況。希少なB400 Top Hat and Caneのテナーを2本のうちから1本選定できるという、想像もつかないくらい得難い機会をたまたま得たのは、良い思い出。いずれも調整が万全な状態ではなく、判断を迷ったことから一瞬、2本とも買ってしまおうかという考えが頭をよぎった。しかしその2か月くらい前にMark 7テナーを買ったばかりだし、Buescherは他にも400TH&CのアルトとAristcratのテナーがあったので、そこまでの無茶はできないと思いとどまって1本だけを入手。今となって考えると、2本買ったとしても、アメセル1本より安かったのだから、無茶してもよかったかな。(良い子は真似したらアカンで)

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 さて、B400の生産された時代には野心的な構造だったが、現代サックスには殆ど継承されなかった部分を見てゆこう。

 

最大の特徴は、やはり先述したBehind Bellなのだが、それだけではない。例えば、ネックの接合部。KingやConnで採用されていたダブルソケットと呼ばれる機構(ネック側の嵌合部を二重の円筒状として、その間に二番管を挿し入れるもの)では無いものの、嵌合部の真鍮を削った跡に銅板(真鍮より柔らかい素材)を巻き付け、密閉性の向上が図られている。

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また、経年によるネックの垂れ下がりを抑えるためか、ネックの上部には補強板が貼られている。このため、オクターブキーはアンダースラング形状。ただし、Top Hat & CaneではないB400では、アンダースラングでは無い仕様のものもある。

 

ベルに目を移すと、ビッグベルの裏側には、シルバープレートでの補強が為されている。

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ストラップリングも、見るからに重量がありそうな、真鍮では無い素材の金具が使われている。何らかの狙いがあったのだろう。

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最後に、ベルの彫刻の中でも城の部分。僕のテナーは、単純に管体を彫っただけの仕様だが、ここに金属が盛られて、立体的彫刻になっている個体も存在している。すでに手放したアルトは、立体的彫刻だった。 

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つらつらと書いてきたが、何というか、ずいぶんと手間の掛かった楽器であることはお分かりいただけるだろう。工芸品と言っても良いのではないかと思っている。これが例えばヤマハの82Zだと工業製品という感じなので、それを眺めながら一杯呑もうとは思わないが、B400だったら、眺めながら3杯は呑めそうだ。

 

 

今更ながらの基礎練習と、細長い管楽器の入れ替わり

前回の更新が2020年4月27日だったので、ほぼ10か月ぶりとなる。長らく息をひそめていた間に、新型コロナウイルスの感染拡大といった歴史的イベントが続いていたが、私は今のところ、感染経験無しが幸いにして続いている。

 

昨年前半は長らくジャズセッション現場が休業状態となり、緊急事態宣言解除で自粛期間が明けた後も、客足が戻ってこないという声を時折聞く。利用者の立場としての私も、出かける先は実質メインの店のみに絞って、あまり範囲を広げないようにしているので、さもありなんと思う。

 

セッション現場へ出かける時間を減らしたので、その代わりにという訳でもないのだが、何か月かサックスのレッスンに通うことにした。サックスを始めて10年以上になるのだが、実はこれまでほぼ独習。言い方を換えると見様見真似ってやつ。でも、基礎を固めないままでは応用の限界が早く訪れるだろうから、いつかはレッスンで基礎を教わろうと思っていた。

 

2020年8月から月に2回ペースで基礎部分に重点を置いたレッスンを受け、自主練習の時間も基礎練習に時間を重点配分していた。おかげで、触ったことの無いキー(笑)というのは無くなったし、音の出し方も改善傾向にある。ただ、講師から出題していただいたジャズっぽいフレーズ集を身に着けるには、時間が足りない。フレーズ集はC、D、Gのキーで幾つか頂いたのだが、これを12キーで実戦に使えるようにするのが、当面の目標。という状態なので、2021年2月でレッスンは終了させ、あとは自主練習の予定。

 

こんな風に、昨年から基礎力アップに取り組んだ訳だが、なぜか楽器の入れ替わりも多かった。おかしいなぁ~(苦笑)

 

まずは、レッスンに使うテナーサックス。さすがに1940年代製のBuescher 400をレッスンに使う気にはならなかったので、Selmer Mark7とCannonball Ravenのいずれかという選択肢。Mark7は文句の出ない楽器なのだが、元プロ奏者の使用楽器で、それなりに疲労摩耗しているから、練習であまりすり減らしたくない。となると黒いキャノンボールしか無い。だが、2年くらい使っていて、自分にとっては重量過大と感じられたことと、台湾製の弱点として、軸受けが摩耗した後のメンテナンスに不安が残ることから、日本製もしくはフランス製に買い替えることとした。中古でSelmerのリファレンス36やヤマハの875など、いくつか試奏した結果、アンラッカーのヤマハの82Zに感動したものの、傍鳴りしないラッカーの82Zという選択に行き着いた。モデルチェンジ後のV1ネックではなく、初期のG1ネックの方で、10年以上昔の楽器なのに、見た目はほぼ新品。おそらくは前オーナーが何回か吹いて、そのまま使われなくなったのだろう。

 

レッスンには原則82Zを持参しているが、都合でMark7を持参したこともある。その時は講師がそれを試奏して、上から下までバランス良く音の出る良い楽器と絶賛されていた。だが、82Zもなかなか良い楽器だと思う。操作への反応はMark7より早いんじゃないかな。

 

話は戻って82Zを買う時に、キャノンボールと同時に、ソプラノの82ZRも下取りに出した。いい楽器なんだけど、ヤナギサワのS-9030と比べると、ほとんど使わなかったのだ。カーブドネックよりはストレートネックの方が、自分には向いているらしい。

 

これで管楽器が1本減ったなと思ったところへ、AKAIがスピーカー内蔵のEWI SOLOを発売するというニュースが飛び込んできた。実はすでに最も安いEWIを持っているのだが、外部音源が必要なので、箱から出していなかったのだ。発売希望価格を見て、すぐに予約を入れて届いたのがこちら。全長80センチくらいあるので、Travel Saxと比べると、なんとも巨大(笑)

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EWIといえばTスクエア。なので宝島などチャラっと吹いて遊んでいたら、ショックなニュース。なんとヤマハが「デジタルサックス」を発売するだと . . . . . .

 

先にそれを知っていたら、EWI SOLO、買わなかったよ(トホホ)

 

だが、だからといってデジタルサックスを予約しないという選択肢は、ハナから思い浮かばなかった。自分でも、つくづくイカれていると思う。

 

というわけで、発売直後にデジタルサックスYDS-150を入手。

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サックスっぽいマウスピースを使うが、アンブシュアの練習にはならない。それを分かって使う分には、面白い電子楽器だと思う。自宅での運指練習には使えるし、なんといっても、この大きさこの軽さでバリトンサックスの音が出せるんだぜ!!!

 

演奏頻度が無い割には、いろいろと楽器の変動があったなと、しみじみ思いながら、久しぶりの更新原稿を書いている。楽しみにしていた仙台の定禅寺ストリートジャズフェスティバル、昨年は当然のように中止となったが、今年はどうなることやら。開催される場合に備えて、また色々と仕込みの時期に入ります。

 

Travel Sax レビューみたいなもの

これを書いているのは2020年の4月。これに先立つこと13か月、2019年の3月に、Kickstarter経由で、とある商品開発に出捐した。それがコチラ

www.kickstarter.com

音楽にさほど関心が無い方が見ると、何に使うものなのか見当も付かないかと思うのだが、これはサックスの練習用器具。吹いても、この器具だけでは音が出ず、スマホアプリを通じて音を聞くことができるというもの。つまり、他の人を騒音被害で悩ませることなく、サックスを練習するための器具だ。

 

サックスに限らず、管楽器奏者にとって練習環境の確保は悩みの種。カラオケボックスを使ったり、河原へ出かけて吹くなど、それぞれが苦労している。だが、これが謳い文句どおりなら、その苦労は解消されるだろう。

 

出捐から1年を経て、ようやく発売可能な状態に至ったようで、最終プロトタイプが送られてきた。

www.odiseimusic.com

 

Kickstarterで公開されている情報では、出捐者(バッカー)総数が247人で、国別に見ると日本が最多の87名。ということで、僕以外にも80人以上、発売前にこれを受け取るモノ好きがいる(笑)

 

Kickstarterからの引用開始】

バッカーの住んでいる場所 トップカントリー
日本 87(うち東京 28)
アメリカ 35
スペイン 14
ドイツ 13
フランス 11
イギリス 11
スイス 7
オーストラリア 4
カナダ 4
【引用終了】
 
それにしても、スペインといえば、例の感染症で大変な地域。そんな中でも、しっかりと国際物流が動いていることに感動。物流に携わる世界の皆様、ありがとう!
 
UPSが届けてくれた段ボール箱の中には、真黒な紙箱が1つ。

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スペインで出荷されてから1週間近く経っているので、まぁ大丈夫だろうと思うが、一応はアルコール消毒のスプレーを吹きかけておく。

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紙箱の中には、キャリングケース。

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ケースには取扱説明書も入っている。しっかり日本語版になっていたのは、想定外で有難い。てっきり英語の説明書を苦心して読むものだと思っていた。

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開けると、まずアルト用マウスピースが目に付く。

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マウスピースのほか、マウスピースアダプターも入っていて、テナー用やソプラノ用のマウスピースも使用可能。

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で、いよいよ本体が姿を見せる。しっかりと保護されていて、どこを持って取りだしたら良いのか、一瞬迷う。ちなみに、ここを持って取り出すように、と説明書に書かれているので、変なところを持って取り出す前に、まず説明書を読もう。

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重さは300グラム程度なので、アルトサックスの上に置いてみた。これでサックスのキー配置を再現できているのか、不安になるくらい小さい。
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アダプター経由でテナー用のマウスピースを付けると、こんな感じ。

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いざ持ってみると、違和感なく「あ、サックスのキー配列だ」と思わせられる。

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専用アプリをダウンロードして、実際に何日か使い、その経験をQ&Aにまとめてみた。
 
Q1 吹くと本体やマウスピースから音は出るの?
A1 機材自体からは、楽器の音は出ない。息の抜ける音だけ。マウスピースにリードを付けただけで出せる音も、Travel Saxに装着すると出せない。
 
Q2 どこから楽器の音をだすの?
A2 Bluetooth経由でスマホアプリを使い音を出す
 
Q3 スマホは i PhoneとAndroidのどちらが使えるの?
A3 両方使えるらしい。うちの場合、おそらくはバージョンが古いため、Androidではアプリが起動できなかった。このため、iPadiPod touchでアプリを使っている。
 
Q4 マウスピース は何が使えるの?
A4 デフォルトはアルト用だが、アダプターが付属しているので、ソプラノ用とテナー 用も使える。なお、付属品にはアルト用マウスピース (メーカーや型番表示無し)、リガチャーとリード1枚が含まれている。
 
Q5 調性はどうなっているの?
A5 アプリでソプラノ、アルト、テナー を切り替えるようになっており、それぞれの調性と音高に応じた音が出てくる。
 
Q6 材質や重さは?
A6 3Dプリンターで部品を作っているらしく、樹脂製で、重量は300g台。慣れるまでは、軽すぎて不安。
 
Q7 吹いた感じはサックスと同じ?
A7 サックス より抵抗感は相当強い。
 
Q8 運指はサックスと同じなの?
A8 コンパクトなのに、感覚的なキー配列の再現度は高く、運指も同じ。ただし、換え指には恐らく対応していない。あと、ミドル音域はオクターブキーを押さないと出ない。
 
Q9 ビブラートは出せる?
A9 出せる。
 
Q10 特殊操法(グロートーンやフラジオ等)には対応しているの?
A10 基本、対応していないと思われる。
 
Q11 使ってみて、サックスの練習になる?
A11 運指の練習には、なると思う。ただし、素早いキー操作に対して音の切り替えが追いつかない現象が時折り生じることや、グニャっとしたキーストロークなど、細かい不満は幾つも感じるだろう。とはいえ、周囲への騒音被害を全く気にせず練習できることの価値は大きい。
 
Q12 e-Saxと比べて、どう思う?
A12 アレはアレで、コレはコレ。多少音を出しても構わなくて、遮音ケース内が息で蒸れることを気にしないなら、吹奏感はe-Saxの方が良い。あと、ピッチコントロールの練習は、Travel Saxでは出来ないと思われる。
 
Q13 俺たち私たちも買えるの?
A13 知らんがな(笑) 製作会社が予約受付中らしいが、欲しいと思うのだったら、自身でググってね。
 
Q14 これを買う場合、他に買う必要があるものは?
A14 無くても何とかなるかもしれないが、マウスピース の差し込み口はゴム製のOリングが使われているので、ネックグリスが有るとマウスピース の抜き差しが楽。
 
Q15 EWIなどと比べて、どう?
A15 持ってない人間に聞くな(笑)
 
Q16 これでロングトーンを続けたら、音色は良くなる?
A16 未知数だけど、僕はそう思わない。
 
さて、Q&Aはともかくとして、総合評価。
 
僕自身は使える機材だと思っているけど、主にアプリ側の課題として、キー操作等に対応する反応速度は、まだ追いついていない局面が散見される。このため、為人を僕が知らない方とこの製品について話す場合には、もっと全体的に煮詰められるまで待つ方が良いと言う。煮詰められていない部分を許容できる人だと僕が知っている方と話す場合ならば、「まぁ、悪くは無いと思うよ」って言うかな。
 
#travelsax   #トラベルサックス 

トランペットとソプラノサックスの持ち替え

何度か書いているとおり、僕は主にトランペットとテナーサックスを演奏している。普段はこの2つの楽器を同時に持ち歩いているが、たまにテナーをソプラノに変えることがある。

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テナーとトランペットだと、音域(出る音の領域の全般的な高さ)はかなり違うのだが、これがソプラノだと、実はトランペットと大して違わない。一覧表にしてみると、以下のようになる。なお、ソプラノでHigh Gまで出ると記載しているが、これはHigh Gキーが付いている楽器が、それなりに普及しているために、このように記載している。「俺のはF#キーすら付いてないから、Gなんか出せない」と言われても、そこまでは知らんがな(笑)

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このように音域を可視化すると一目瞭然なのだが、トランペットが上手い人の多くは、ソプラノサックスの音域を全部トランペットで出すことができる。

 

参考で僕がトランペットを始めた時と今の音域を書いておいたが、トランペットの最高音は、人によってかなり違う。僕はあまり苦労が無く、Middle Gまで出すことができる状態でスタートしたが、次のHigh Aを出せるようになるまで3年以上かかっているし、実務的に必要な最高音であるHigh Cを出せるまでには10年近くかかった。人によっては、最高音がMiddle Cからのスタートだったりする。このような、高い音が苦手なトランぺッターにとって、ソプラノサックスというのは、結構魅力的に映る楽器。使いたい(高い)音域が、すぐにも使えそうに見える。いざやろうと思うと、音程のコントロールが難しいとか、音色が細いとか、金切り声に聞こえがちとか、単純に楽器の価格が高いとか、色々とハードルはあるのだが、「あいつら(ソプラノ吹き)、旨いコトやりやがって」と妬むくらいなら、いっそやってみよう。1週間で挫折する確率が非常に高いから、あまり勧められないけど(笑)

なお、安いソプラノは音程が悪く使い物にならないことが多い。やるなら、そのへん調べてからにするほうが良いということは、言っておこう。

 

さて、僕の場合、ある程度はソプラノサックスを使える状況まで仕上げたので、トランペットとの持ち替えで使うことがある。そこで出てきそうな、素朴な疑問。

 

「音域が似ているのに、なんで持ち替えるのか?」

 

そう思ったトランぺッターなアナタ、フリューゲルホーンと持ち替えるのって、よくある話でしょう? 同じなンです。音色が違うというのが、最大の理由。トランペットの雑味タップリな音ばかりじゃなく、たまには清々しい音色、出してみたくなるんです。

 

 

おっさん初心者の大型二輪レンタル歴なぞ披歴してみる

2018年に、いい年齢(とし)のオッサンが大型二輪免許を取ってから1年が経過したわけだが、大型二輪じゃ無いのも取り混ぜて、何台か乗ってみた。その感想を披歴してみる。

 

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最初に乗ったのが、スズキのSV650X。直角V型2気筒の650CCで、大型二輪としてはかなりスリムなバイク。パワーがさして手に余ることもなく、いいバイクだと思う。ただ、慣れないこともあり、渋滞時のクラッチ操作は少々負担に感じたことが記憶に残っている。

あと、これをレンタルする直前に、運悪く四十肩を発症してしまった。これの痛みをこらえながら、カフェレーサースタイルの前傾姿勢を続けるのは、結構つらかった。

 

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 二番目に乗ったのは、大型二輪の最近の売れ筋であるカワサキZ900RS。見るからに、懐かしいオートバイの形。メーターもアナログで、外観は僕の好みにドンピシャ。

アクセルをさして開けなければ、扱いにくいということも無いが、高速道路で大きくアクセルを開けると、かなりの加速。一気にアクセルを開けたら、ウィリーするんじゃないかと思うくらい。さすがに100馬力を超えるだけのことはある。また乗ってみたいと思うのだが、レンタルの予約が結構埋まっていて、なかなか借りる機会が無い。

ちょっと意外だったのは、アイドリング時の排気音。予想していたより少々大きい。早朝にエンジンをかけて、アイドリングさせておくには、ご近所が少々気になるところ。

 

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三番目はホンダのレブル500。同じシャシーで単気筒のレブル250が、今のマニュアルギアのバイクでは売れているらしいが、その2気筒版。こいつで栃木まで高速道路を往復したのだが、馬力は足りている。だがアメリカンなライディングポジションのため、風圧の影響をかなり受ける。80キロくらいで流すなら良いのだけど、それ以上だと、ヘルメットが風で揺さぶられることもあった。

これの前に4気筒に乗っていたこともあり、高速道路でハンドルへの振動はそれなりに感じる。だが、それで疲れるというほどでもない。

予想外だったのは、ライディングポジション。どうも僕には、アメリカンスタイルは向かないようだ。ステップとの位置関係が原因で、ギアが少し操作しづらかった。

 

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四番目は、スズキのスクーターでバーグマン200。文字通り200ccなので、高速道路はキツいかなと予想していたのだが、普通に流れに乗って走る分には、さして不自由しないし、単気筒なのに振動は、同じく単気筒のエストレヤと比べると、雲泥の差。ウインドスクリーンが付いていたので、とにかくラクチン。スクーターだと200CC単気筒でも、以外と快適に走れるものだと、感心した。バイク乗りをダメにするスクーターかもしれない。

 

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五番目も普通二輪。教習所で乗っていたのと同じ、ホンダのCB400SF。ただし、教習車はそれ専用のセッティングで、エンジンの出力も落としてあるらしい。また、教習所で6千回転以上に回す機会など無いが、このバイクのレッドゾーンは12,000回転より上から始まっている。というわけで、山道で乗るCB400SFは、教習所のそれとは別物。4気筒の400CCを思いっきり回して走るのは、かなり気持ちいい。

ライディングポジションは、これが一番しっくりくるし、6千回転を超えると別次元の馬力を発揮するエンジンと相まって、別に大型二輪でなくてもいいんじゃね?と思ったり思わなかったり。

 

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さて、最後は大型二輪に戻って、カワサキのZ1000。人生初のリッターバイクが、こんなスパルタンなバイク(なんと140馬力)で良かったのだろうかと思いながら、三浦半島を走らせる。何て言うか、レーサーレプリカじゃないけど、回すとスゴいんです、って感じのバイク。さながら、加速番長!とでも呼ぼうか。

乗りにくいというわけじゃないが、CB400SFと比べると、やはり大排気量だなぁと実感させずにおかない。Z900RSよりもずっとスパルタンなバイクなので、1回乗れば、もういいかな。少なくとも、僕の好みからは外れている。

 

といった具合に、何台か乗ってきたわけだが、いつかハーレーに乗ってみたいという目標には、いまだ達していない。なにせハーレーは重い(300キロ超)ので、それよりは軽いバイクで慣れておこうと、少しずつ思いバイクに挑戦しているところ。これまでで最も重かったZ900RSが220キロくらいなので、もう少し段階が必要。ということで、次回はホンダのCB1300(270キロ)に挑戦します。

 

Donald Fagenを探る僕の事情、もしくは如何にしてジャズが見限られたのか

僕が普段聴く音楽は、ほぼジャズばかり。でも、子供の頃からそうだったわけじゃない。同年代の人並みに、FMのエアチェックで日本のポップスを聴いていたし、洋楽も少しは聴いた。

 

このように、ジャズセッションで出会うアマチュアミュージシャンの多くと同じく、僕も出発点はフォーク、ニューミュージック、ポップス、そして洋楽。大学を卒業してから、ソニー・ロリンズの名盤「サキソフォン・コロッサス」に出会い、それからはジャズ漬けの日々を送っている。

 

 洋楽について、少しは聴いたと書いたが、未だにクリームなど弩級のメジャーどころすら頭に入っていないことが、今でも時々露呈してしまう。バンド(歌手)に着目して聴くのでは無く、その時に流行っている洋楽を何度か聴く程度だったから、洋楽については殆ど曲単位での知識しか無い。だから、洋楽のジャンル分けも、知識がすごく曖昧。

 

このように洋楽については、基本的には曲単位でしか着目しなかったのだが、例外的にアーティスト名をキーにして聴いていたのが、AORの代名詞とも言えるSteely Dan / Donald Fagen。もっとも、他にAORのアーティスト名を挙げてみろと言われたら、即座に白旗を揚げるんだけどね。

 

脱線しかけたが、最初にI.G.Y.を聴いた時は、なんて洒落た音楽なんだろうと強い衝撃を受けた。そして、AjaやGauchoで、またも「スッゲー、他のミュージシャンとは違っているってことだけ分かるが、何が違うのかが分からない。でもとにかく、格好いい」と思わされ、そのまま現在に至る。

 

 ジャズの影響を強く受けているというか話は聞いたことがあるのだけれど、それ以外にも、最近こんな本を読んで、何が違うのかを少しだけ紐解くことができた気がする。ちなみにナイトフライってのは、I.G.Y.が冒頭に収録されているDonald Fagenのソロデビューアルバムのこと。

ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法

ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法

 

 

とはいえ、なぜナイトフライやAja、Gauchoを洒落ている、もしくは格好いいと僕が感じたのか、それについての手掛かりは無かった。このため、次に手にした本がこちら。

ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS

ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS

 

 

 ライターとしてのDonald Fagenが書いたエッセイを集めたこの本、実を言うと僕はまだ第一章しか読めていない。何故かというと、予習復習が必要な内容だったから。

 

「エッセイ集を読むのに何で予習や復習が要るんだ?」と思われるかもしれない。でも、予習無しで読んだら、1割くらいしか頭に入ってこないだろう。たまたま僕は、予習に適した本を読んだことがあるので、3割くらい、なんとか頭に入った気がする。でも、もっと深く読み解くためには、復習として調べ物が必要。

 

第一章を読んで分かったのは、Donald Fagenのルーツが幼少期からのジャズ体験(ハイスクールの頃はピアノトリオでジャズを演奏していたらしい)にあり、ジャズに飽き足らなくなって、その先に進んだ人だということ。ゆえに、第一章は1920年代のジャズシンガーの話から始まって、マンシーニに至っている。それを語る過程で、ミンストレルショーなど、その頃のアメリカの風俗に関する予備知識が多少なりとも無いと、Donaldが何を言っているのか、さっぱり分からない。エラい本に手ぇ出してもうたなぁ(汗)

 

などと、脅かすようなことを書いてきたが、その文章は音楽と同様に洒落ていると感じる。難解な文章が苦にならない方には、おすすめできるかな。

ちなみに、予習に適した本と書いたのは、これのこと。こちらも独特の文体で、読みやすいとは言い難いが、ジャズの歴史を当時の風俗世情と絡めながら解説している良書だと思う。同じ著者の「憂鬱と官能を教えた学校」まで読むと、結構な予習になるだろう。

 

 

 

 

 

 

サックスを始める人にアルトは扱いやすいのか?

現在、一般的に使われるサックスは、主に3種類。ソプラノ、アルト、テナー。小学校や中学校で習ったリコーダーと変わらない。バリトンサックスも有名で、ビッグバンドでは必須だが、かさばるし、値段も結構高いから、そう多くの方が持っているわけではない。あと、ソプラニーノというものもあって、ジャズ・フュージョンだと渡辺貞夫さんの演奏が比較的有名。

 

音の高さを比較すると、こんな関係になっている。

ソプラニーノ > ソプラノ > アルト > テナー > バリトン

 

管楽器の音の高さは、管の長さに反比例する。また、管が長いと当然ながら重くなる。従って、管の長さ・重さで見る場合、上掲の関係は逆になる。

 

さて、最近とあることを調べようとYou tubeで検索していて、ある方が「サックスを始めるには、テナーサックスが向いている」と言っているのに対し、結構な数でそれを叩くコメントが付いていた。曰く、サックスを始めるにあたって向いているのはアルトというのが常識だとか。

 

実際、サックスを始める人の多くはアルトを使うことが非常に多い。テナーで始める人は少数派で、ソプラノで始めたいというと変人扱いされることすらある。

 

では、誰もが演奏したことのあるリコーダーをダシに使い、僕の考えを説明してゆこう。リコーダーとサックスで、大きく違うところがあって、リコーダーは直管なのに対し、サックスは円錐管である。この違いは、音程のコントロールに大きく影響する。リコーダーは決められたとおりに穴を塞げば、決められた音程の音がほぼ正確に出るが、サックスはその決められているはずの音程の音を、誰もが正しい音程で出せるとは限らない。上下それぞれ半音くらいは、簡単にずれてしまう。人によってはサックスを「音痴な楽器」とも言うくらいだ。

 

半音くらいイイじゃないか、と思わなくも無いのだが、二つの音を組み合わせた和音のうち、もっとも耳障りに響くのが、実は半音違いの二音だったりする。このため、合奏するならば出来るだけ正確な音程で吹けるようにならなければならない。

 

ちょっとだけ物理の話をする。高い音は、低い音に比べて周波数が短い。ということは、高い音域でのドとレの周波数の差は、低い音域のドとレの差よりも短いわけだ。逆に考えると、同じ周波数の差であっても、高い音域と低い音域では、ズレの聞こえ方が全然異なってくる。極端な話をすると、高い音域だと多少ズレてるかなと聞こえるくらいの差なら、低い音域だと気にならなくなるのだ。

 

サックスを吹く人に「難しいサックスはどれ?」と聞いた場合、8割以上の方がソプラノ、1割くらいはソプラニーノと答えるんじゃないかと、経験上で感じている。つまり、管の長さが短く、音程のコントロールがより厳しく求められるサックスに、大抵のサックス奏者は苦手意識を持っているということ。

 

ここまで言えば、アルトとテナーのどちらが、サックスを始める人にとって優しい楽器なのかは、おのずと分かると思う。自分の経験からも、上記の理由からも、テナーの方がサックス初心者にも扱いやすい。

 

ちなみに、「フルートやクラリネットの方が、管の長さがアルトより短いんだけど、アルトより難しいの?」と思った方がいるかもしれない。少なくとも音程に関しては、アルトより楽だろうというのが、僕からの回答。なぜなら、フルートとクラリネットは、リコーダーと同じく直管だから。

 

ただし、アルトとテナーのどちらを選ぶのかを考える際に、音程コントロール以外にも考えるべきことがある。例えば楽器の大きさや、音色など。例えば、アルトは初心者だと、音色が金切り声みたいに耳障りな音になりやすい。また、テナーは結構重くて、持ち歩くときのケースまで含めた重量は8キロ以上を覚悟しなければならない。アルトなら5キロ以内に収めることも可能。そういった複数の要因を考えた結果として、アルトを選ぶ人もいるだろう。だが、盲目的に「始めるなら常識的にはアルト」と言われ、思考停止したままアルトを吹いている人、案外多いかもしれない。

 

「吹いたことが無い楽器について、比較しろと言われても」と思う方のために、吹かずに選ぶためのポイントを、書いておこう。

  • 人前で演奏するまでの時間が、例えば6か月後に発表会があるなどといった具合に、制限されていない
  • 積極的に管楽器と合奏したいとは思わない(吹奏楽部やビッグバンドなんてもってのほか)
  • 人に聞かせるレベルの音色に達するのに、半年以上の時間をかけることができる
  • 固い音色(対義語は柔らかい音色)が好き
  • サックスが上手な指導者がいる(ただし吹奏楽部の上級生は含めない)

 上の5項目は、全てアルトで始めても問題ないという視点で書かれている。従って、この5項目の3つ以上に当てはまるならば、僕のように、アルトで始めて大失敗という結果にはならないだろう。

 

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