新・桂庵雑記

Jazz演奏やロードバイク、山や海など、桂庵(けいあん)が趣味に関することを書き散らしてます

Travel Sax レビューみたいなもの

これを書いているのは2020年の4月。これに先立つこと13か月、2019年の3月に、Kickstarter経由で、とある商品開発に出捐した。それがコチラ

www.kickstarter.com

音楽にさほど関心が無い方が見ると、何に使うものなのか見当も付かないかと思うのだが、これはサックスの練習用器具。吹いても、この器具だけでは音が出ず、スマホアプリを通じて音を聞くことができるというもの。つまり、他の人を騒音被害で悩ませることなく、サックスを練習するための器具だ。

 

サックスに限らず、管楽器奏者にとって練習環境の確保は悩みの種。カラオケボックスを使ったり、河原へ出かけて吹くなど、それぞれが苦労している。だが、これが謳い文句どおりなら、その苦労は解消されるだろう。

 

出捐から1年を経て、ようやく発売可能な状態に至ったようで、最終プロトタイプが送られてきた。

www.odiseimusic.com

 

Kickstarterで公開されている情報では、出捐者(バッカー)総数が247人で、国別に見ると日本が最多の87名。ということで、僕以外にも80人以上、発売前にこれを受け取るモノ好きがいる(笑)

 

Kickstarterからの引用開始】

バッカーの住んでいる場所 トップカントリー
日本 87(うち東京 28)
アメリカ 35
スペイン 14
ドイツ 13
フランス 11
イギリス 11
スイス 7
オーストラリア 4
カナダ 4
【引用終了】
 
それにしても、スペインといえば、例の感染症で大変な地域。そんな中でも、しっかりと国際物流が動いていることに感動。物流に携わる世界の皆様、ありがとう!
 
UPSが届けてくれた段ボール箱の中には、真黒な紙箱が1つ。

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スペインで出荷されてから1週間近く経っているので、まぁ大丈夫だろうと思うが、一応はアルコール消毒のスプレーを吹きかけておく。

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紙箱の中には、キャリングケース。

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ケースには取扱説明書も入っている。しっかり日本語版になっていたのは、想定外で有難い。てっきり英語の説明書を苦心して読むものだと思っていた。

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開けると、まずアルト用マウスピースが目に付く。

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マウスピースのほか、マウスピースアダプターも入っていて、テナー用やソプラノ用のマウスピースも使用可能。

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で、いよいよ本体が姿を見せる。しっかりと保護されていて、どこを持って取りだしたら良いのか、一瞬迷う。ちなみに、ここを持って取り出すように、と説明書に書かれているので、変なところを持って取り出す前に、まず説明書を読もう。

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重さは300グラム程度なので、アルトサックスの上に置いてみた。これでサックスのキー配置を再現できているのか、不安になるくらい小さい。
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アダプター経由でテナー用のマウスピースを付けると、こんな感じ。

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いざ持ってみると、違和感なく「あ、サックスのキー配列だ」と思わせられる。

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専用アプリをダウンロードして、実際に何日か使い、その経験をQ&Aにまとめてみた。
 
Q1 吹くと本体やマウスピースから音は出るの?
A1 機材自体からは、楽器の音は出ない。息の抜ける音だけ。マウスピースにリードを付けただけで出せる音も、Travel Saxに装着すると出せない。
 
Q2 どこから楽器の音をだすの?
A2 Bluetooth経由でスマホアプリを使い音を出す
 
Q3 スマホは i PhoneとAndroidのどちらが使えるの?
A3 両方使えるらしい。うちの場合、おそらくはバージョンが古いため、Androidではアプリが起動できなかった。このため、iPadiPod touchでアプリを使っている。
 
Q4 マウスピース は何が使えるの?
A4 デフォルトはアルト用だが、アダプターが付属しているので、ソプラノ用とテナー 用も使える。なお、付属品にはアルト用マウスピース (メーカーや型番表示無し)、リガチャーとリード1枚が含まれている。
 
Q5 調性はどうなっているの?
A5 アプリでソプラノ、アルト、テナー を切り替えるようになっており、それぞれの調性と音高に応じた音が出てくる。
 
Q6 材質や重さは?
A6 3Dプリンターで部品を作っているらしく、樹脂製で、重量は300g台。慣れるまでは、軽すぎて不安。
 
Q7 吹いた感じはサックスと同じ?
A7 サックス より抵抗感は相当強い。
 
Q8 運指はサックスと同じなの?
A8 コンパクトなのに、感覚的なキー配列の再現度は高く、運指も同じ。ただし、換え指には恐らく対応していない。あと、ミドル音域はオクターブキーを押さないと出ない。
 
Q9 ビブラートは出せる?
A9 出せる。
 
Q10 特殊操法(グロートーンやフラジオ等)には対応しているの?
A10 基本、対応していないと思われる。
 
Q11 使ってみて、サックスの練習になる?
A11 運指の練習には、なると思う。ただし、素早いキー操作に対して音の切り替えが追いつかない現象が時折り生じることや、グニャっとしたキーストロークなど、細かい不満は幾つも感じるだろう。とはいえ、周囲への騒音被害を全く気にせず練習できることの価値は大きい。
 
Q12 e-Saxと比べて、どう思う?
A12 アレはアレで、コレはコレ。多少音を出しても構わなくて、遮音ケース内が息で蒸れることを気にしないなら、吹奏感はe-Saxの方が良い。あと、ピッチコントロールの練習は、Travel Saxでは出来ないと思われる。
 
Q13 俺たち私たちも買えるの?
A13 知らんがな(笑) 製作会社が予約受付中らしいが、欲しいと思うのだったら、自身でググってね。
 
Q14 これを買う場合、他に買う必要があるものは?
A14 無くても何とかなるかもしれないが、マウスピース の差し込み口はゴム製のOリングが使われているので、ネックグリスが有るとマウスピース の抜き差しが楽。
 
Q15 EWIなどと比べて、どう?
A15 持ってない人間に聞くな(笑)
 
Q16 これでロングトーンを続けたら、音色は良くなる?
A16 未知数だけど、僕はそう思わない。
 
さて、Q&Aはともかくとして、総合評価。
 
僕自身は使える機材だと思っているけど、主にアプリ側の課題として、キー操作等に対応する反応速度は、まだ追いついていない局面が散見される。このため、為人を僕が知らない方とこの製品について話す場合には、もっと全体的に煮詰められるまで待つ方が良いと言う。煮詰められていない部分を許容できる人だと僕が知っている方と話す場合ならば、「まぁ、悪くは無いと思うよ」って言うかな。
 
#travelsax   #トラベルサックス